学習デスクの上には、生活ノートが置かれている。その生活ノートへ、思い切りナイフを突き刺す。
ナイフの刃は生活ノートを貫通して、学習デスクに垂直に刺さって静止した。
ぽつぽつと雨粒のような滴が生活ノートへ落ちて、初めて自分が涙を流していることに気づいた。
*
翌日の月曜日、奈央は三十九度の熱を出した。
体温計を見せると、母も渋々、学校を休むことを許してくれた。母がパートへ出かけたのちに、奈央は二階の和室を訪れた。
二階の和室の押し入れは物置に使われている。押し入れの下段には、母が読んでいた一昔前の漫画が、段ボールに入れてしまってある。
父の古いノートパソコン
熱でぼうっとした頭で漫画を漁るうちに、ふと押し入れの上段の片隅に古い型のノートパソコンを見つけた。
DELLと記された14インチほどの黒いノートパソコンだった。おそらく父が昔使っていたものだ。
ノートパソコンの脇には、取扱説明書と、アダプターと、十五メートルはあるエメラルドグリーンのコードが束ねて置かれていた。説明書によれば長いコードはLANケーブルといい、ルーターに挿せばネットに繋がるらしい。
奈央は父の部屋のルーターにLANケーブルを挿すと、ノートパソコンを自分の部屋へと持ち帰った。LANケーブルは充分な長さがあって、うまく廊下を這わせることができた。
ノートパソコンにアダプタを繋いで、ベッドに腰かけて、電源を入れてみる。一分が過ぎたころに、ゲームの起動音のようなサウンドが響き、Windows98と記された画面が立ち上がった。動作は遅いが、たぶん壊れてはいない。そしてこのノートパソコンには、パスワードが設定されていなかった。
ディスプレイに現れた画面を見てぎょっとした。大量のアイコンやフォルダで全面が埋め尽くされている。几帳面な父の、意外な一面を見た気がする。どれをクリックすればネットが見られるのだろう。
手当たり次第にアイコンをクリックしてみるも、意味不明なソフトが立ち上がるばかりだ。そして半時が過ぎたころ、フォルダの奥底に妙なアイコンを見つけた。
紫色のたまねぎみたいな形のアイコンだった。



















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