
旧校舎の空き教室
翌週の放課後のことだった。
「楠木さん、ちょっといい?」
帰り支度をしていると、木村に声をかけられた。クラスの男子がある事情で困っているから、協力して欲しいという。
嫌な予感を覚えながらも、木村に連れられて教室を出た。
二年二組は新校舎の二階にある。木村は二階の連絡通路を渡り、旧校舎の廊下の角を折れた。その先は突き当たりまで、長い廊下が続いている。初夏の西日が窓から差し込んで、リノリウムの床には図形のような濃い影が落ちていた。
静かだった。中庭を挟んでいるので、校庭で練習しているだろう運動部の掛け声も聞こえない。新校舎の三階から、吹奏楽部のフルートやホルンの音色が微かに響いてくる。
木村は廊下の途中で一度振り返り、奈央に微笑みかけ、そして空き教室へと入った。空き教室の片側には、机や椅子や備品が積まれていた。残りの半分の空いたスペースには、一脚の椅子が置いてある。




















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