
体育の授業の後、木村が話しかけてくる
その日、四時間目の体育の授業は跳び箱だった。体育館に何枚かマットを敷いて、生徒は順番に跳び箱を跳んでいく。授業の終了を告げるチャイムが鳴り、皆はぞろぞろと教室へ戻っていく。
第六班は片づけと掃除を担当していた。第六班のもう一人の女子の吉田さんはインフルエンザで欠席していて、だからあの放課後と同じ面子が体育館に残っていた。
すでに跳び箱とロイター板は片づけ終えて、奈央はモップで床を拭いていた。一枚のマットが、未だ体育館のフロアに敷かれたままになっている。
と、木村がこちらを見て、優しげな声で言う。
「ねぇ、楠木さんって、側転できる?」
側転は、奈央が唯一得意とする体操だった。前転と後転は不格好で、倒立はすぐにバランスを崩す。
奈央は警戒しつつも、マットの上で側転をしてみせる。
「すごい上手! わたしって側転できないんだよね」
今度は木村がマットで側転を試みる。斜め方向へ回転して、不格好に尻もちをついた。




















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