「なぁ、スマホ持ってねぇの?」
「教室に置いてきちゃったよ」
「なんだよ、今ならいい写真が撮れんのに」
「おまえ、どうせデッサンなんてする気ないだろ」
「アハハハハ」
「独りぼっちのあんたと遊んであげてるんだよ!」
再び下半身の側から、三宅の腕が入ってくる。マットの中で、五本の指は奈央の股下をまさぐるように蠢いている。次は下着を下ろすつもりだ。
その日、奈央は生理だった。いつか母に教えられた通り、生理用ナプキンを下着に貼りつけてある。
生理用ナプキンのついた下着を剥がされて、バスケットゴールへ引っ掛けられて嘲笑されるくらいならこのまま圧死したかった。
奈央は嗚咽をもらしながら、目の前の木村の顔に訴える。
「どうしてこんなことをするの! わたしのことが嫌いなの? だったらそれでいいから、わたしのことは放っておいて! わたしに関わらないで!」
木村は再び奈央の頬を平手で打つ。涙がマットや床に飛び散っていく。
「だから泣くんじゃないよ! これじゃあたしたちが、あんたをいじめてるみたいじゃないか! あたしはいじめは嫌いだよ、いじめは卑怯だからね、いじめは弱い奴がすることだからね、あたしは弱い奴じゃないからね、だってあたしは学級委員長だからね。それにあたしはあんたに関わらないわけにはいかないね、あたしは学級委員長だからね、学級委員長のあたしが、いつも独りぼっちのあんたと遊んであげてるんだよ!」
三宅の手が、マットの中で奈央の下着をつかむ。その下着を膝下まで下ろされたところで、体育館に大きな声が響いた。
「おい、ヤバいぞ! 室井が校庭をこっちに歩いてきてるぞ!」
その丸井の声を聞き、三宅はすぐさまマットから手を引っこ抜いた。体育の室井は、強面で屈強な体つきをした男性教師で、生活指導も担当している。
木村と三宅と豊田は顔を見合わせる。
ちくしょう、いいところだったのに、三宅が呟き、三人は小走りで体育館の出入口へ向かった。そして校庭に室井の姿を見つけたのか、逃げるように渡り廊下を駆けていった。
奈央はどうにかマットから這い出て、下着姿のままモップの柄でゴールネットから半ズボンを落とした。半ズボンを穿き、体育館の窓から校庭を見る。
確かに室井先生の姿があったが、体育館の様子を見に来たわけではなかった。室井先生は、校庭に放置されていたライン引きを回収して、戸外の物置へと歩いていった。
奈央は団子のように丸まっているマットに片手をついて、未だ鈍い痛みの残る胸部を手の平で押さえた。
マットを平らな状態へ戻すと、白い帆布の表面には線状に赤い経血が伸びていた。
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