豊田はいっそう瞳をギラつかせて、奈央のタンクトップに手を掛ける。奈央はふいと教室の出入口を見て叫んだ。
「あ、安田先生!」
第六班の皆が、出入口を見た。
出入口に、先生などいない。
次の瞬間、奈央は下から思い切り豊田の横顔に平手打ちをした。すると豊田の頭部はぐらぐらと揺れ、のしかかる体重が軽くなった。
身体を滑らせて豊田から逃れる。素早く立ち上がって、空き教室のドアを開けて廊下へ逃げた。
背後から、木村たちの叫び声が聞こえる。
「あいつ嘘をついたぞ!」
「暴力を振るったぞ!」
「豊田君を殴った!」
「捕まえて!」
終わらない悪夢
奈央は放課後の誰もいない廊下を全力で駆けた。リノリウムの廊下を踏みしめる複数の足音が、背後から迫ってくる。
興奮している彼らに捕まったら、なにをされるか分からない。下着どころか、無理やり裸の写真を撮られるかもしれない。
廊下の角を曲がり、新校舎へ繋がる連絡通路を駆けた。連絡通路の角を曲がり、新校舎の階段を一段飛ばしで上っていく。そして屋上へと繋がる四階の踊り場に身を隠した。
遠くから足音が近づいてくる。奈央は手摺りの端からそっと顔を出して、階下を覗き見た。
丸井が廊下の中央で、辺りを見回している。彼は頭を掻いたのちに、来た道を引き返していった。
奈央は背中を壁につけて、そのままずるずると尻もちをついた。心臓が早鐘を打っていて、口の中はカラカラに渇いている。今ごろになって、全身から脂汗が噴き出してくる。



















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