そして父の桜井氏も、(合格・不合格に関わらず)中学受験はするべきだと思う、と言っておられたのが印象的でした。例えば国語の問題の内容が、いじめの根本や人種差別のいきさつを学ぶ文章だと、あえてこの年齢で知り、学び、自分なりの考えを持つ子になってくれるのは、親としての喜びだと言われます。この時期だからこそ学んでほしいことが、たくさんあるはずだからとも。
受験勉強で一番肝心なのは、「やる気」にさせること
桜井氏はまた、子供に受験勉強をさせる上で親の一番の仕事は、勉強のやり方を教えることや良い塾選びではないと、断言されます。我が子を何としてでもやる気にさせる方法を、必死に考え出すことだと言われます。
努力型の佳織さんでしたが、時には弱気になることもありました。そんな時は父親として、なぜ今、あきらめるわけにはいかないのか、丁寧に説明しました。ご自分のつらい経験を生かして、勉強すればどんなに良いことがあるのかを語り、時にはウソや風呂敷を広げてでも、娘にやる気を喚起し続けました。
そんな父親の全包囲に渡るフォローでしたが、第一志望校は不首尾でした。しかしながら佳織さんは、もちろん立ち直りも早く、「相手との距離をつかんだ以上……これは間違いなくたどり着くよ」と、自信満々です。1年5カ月前は、偏差値41だったのが信じられません。
この父娘の死闘は、塾や家庭教師に丸投げして、子供の成績が上がらないと嘆く親御さんに多くの教訓を与えてくれます。親が子供に寄り添い全力で向き合えば子供の大きなモチベーションと勇気になりますし、ともに目標に向かって努力する中で、かけがえのない親子の絆が芽生えるものです。
多くの受験体験本は、元から恵まれた家庭のエリート臭のする本が多いものですが、本書は子供に寄り添う親の在り方として、大いに参考になるのみならず、桜井氏の触媒としての愛情がひしひしと伝わってきて感動的ともいえるものでした。子供に寄り添いともに努力する親の姿を見るうえで、読者の皆様にお勧めしたい良書だと思います。今後、折をみてあと数冊、育児本で優れたものを紹介させていただければと思います。
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