私が「受験競争」を子どもたちに勧める理由 精神科医から見た「建設的な競争」
自己愛を満たすことの重要性
前回記事では、いろいろな競争の方向性を用意して、勝つ体験をさせる、あるいは、勝つ体験をすることは非常に重要だという話をした。人と比べることは人間の基本的な性のようなものであり、そうしたほうが、その後の健全な自信につながるからだ。
しかし、もうひとつの壁になるものがある。精神分析でいうところの自己愛である。
前回記事で紹介した精神分析学者のコフートは、自己愛というのは、他人を通じてしか満たされないと論じた。要するに、自己満足ではダメで、人に認められないと自己愛が満たされないということである。
人に認められなくても「俺は天才だ」「俺はすごい」と思っている自信家の人はいるが、どこか虚勢を張っているように見えるし、実際の業績がない限り、周囲から見ても、健全な自信には見えない。
もちろん、その手の自信でも、自分の天才を信じてチャレンジを続けていれば、最終的には成功につながるかもしれないし、自信が持てなくて、引っ込み思案になるよりいいかもしれない。
しかし、例えば子どもの世界でも、「勉強しないからできない」「やればできる」と一見、自信のあるようなことを言いながら、やってもできなければ自分がみじめになるからと(これが意識できていないことも多いのだが)、勉強をやらないままで、「やればできる」と言い続けたり、信じ続けたりする人も少なくない。
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