私が「受験競争」を子どもたちに勧める理由 精神科医から見た「建設的な競争」

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アドラーのいう劣等コンプレックスとは厳密には違うが、「どうせ負けるんだからやらない」という点で結果的に同じことになっている。

いずれにせよ、勝つとか自信を持つという体験は、人に認められるに越したことはない。日本の受験競争時代の最大の問題点は、勉強で競い合った点でなく、価値観が一元化しすぎてしまったことだ。勉強以外の取り柄があっても、甲子園に出るような選手を除けば、自己愛が満たされないということにあったのかもしれない。

「勝てる」「食える」分野を探す

この意味では、競争のベクトルを増やして勝つ体験をさせるだけでなく、どんなことでも勝った人をきちんとほめてあげるような周囲の対応がセットでないといけない。せっかく絵が上手に描けても、「本当は勉強で勝つほうがもっといいのに」といたような反応を親や教師からされると、やはり健全な自信はもてない。

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ただ、子どもの教育という観点で見た時に、絵であれ、オタク的な趣味であれ、勝ったことで得られる自信をほかのことにつなげていかないと、世の中に出た時にひどい目にあうというのも事実だ。

昔のように終身雇用、年功序列で、また一億総中流と言われるような格差の少ない時代ならともかく、学歴負け組になったり、非正規雇用に甘んじているうちに、一生、その状況から抜け出せないということが当たり前になっている。そうである以上、ある程度は「食える」分野で勝たないといけないのも事実だ。

音楽家の三枝成彰さんに聞いた話だが、音楽の世界で食べられるようになるには、難関で知られる東京芸大を首席で出るくらいでないといけないそうだ。それでも日本の中だけならともかく、海外で勝負しようとするなら、よしんば東京芸大を首席で出て、一流の交響楽団に就職できても、決して収入面では恵まれない。

自分の仕事はオタク的な趣味のもので、人に勝っていると思えれば、現世での不遇に耐えられるのかもしれないが、今くらいの格差社会で、本当に食べられないとか、オタク的な趣味に使う金もないということなら、やはり幸せを感じるのはなかなか難しい。

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