カリスマが「命懸けで採集する」"幻の虫"の正体 尾根から尾根へと移動、スズメバチに襲われても追う

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なんとタワーマンションの高層階にしか住めないらしいのだ。あぶれ個体のその後を調査したデータはないのだが、おそらく外敵に捕食されていると思われる。

その一帯に棲家が一つしかない場合、メスは産卵に出ていくので、入れ替わりに他のメスが一番強いオスと同居できるが、二番手、三番手のオスはエサにありつけることもメスと交尾することもできないことになる。なんか哀れだなぁ……。

オオクワガタ
朽木の中で羽化していたオオクワガタ小歯形の新成虫(写真:キクリンさん提供)

山梨県や大阪府能勢地域は、古くからオオクワガタの“多産地”として知られてきた。

後者の能勢地域は、現在では開発が進んで生息個体が少なくなってしまったが、山梨県は今も健在である。その理由は多数の台場クヌギが残され、山林が手入れされているからだ。

台場クヌギとは、薪にするために枝を伐採し続け、樹高が低いまま幹周りが太くなったものだ。樹齢が100年を超えるものもあり、内部が朽ちてウロが生じながら樹液を出している木も多い。オオクワガタにとっては高級マンションが用意されているようなものだ。

「成虫の個体数」は「ウロのある樹液木の数」に比例するとも言われている。

夏場の樹液採集は難易度が高い

キクリンの案内で、山梨県のあるポイントへ行くと、そこにあった台場クヌギの巨木が幹の途中から倒れていた。洞内が朽ちて重みを支えきれなくなったのだろう。キクリンが過去にも採集した木だったので、とても残念そうだった。残った幹の周りを見たがもうオオクワの気配はなかった。

山道
巨木が横たわる山道をひたすら行く(写真:キクリンさん提供)

とにかくオオクワガタは棲む場所に異常なこだわりをもつ。同じ潜洞性のクワガタでも、コクワガタやヒラタクワガタは入る穴がなければ、小さな窪みでも身を寄せているが、オオクワガタは決して妥協しない。

人間でいえば間取りの良い部屋(ウロや樹皮めくれ)が空いているだけでなく、そこが昔からの高級住宅街(二次林ではなく自然林)でなければならない。

食事(樹液)は外食せずに家の中に限る。さらに家の前に目障りな建物があるとダメ(開けた空間が好き)で、日当たり、風通し全てが条件となる。強いていえば3階建て以上(木の高い場所)が好きで、周りに竹林があるとさらに良い。

ああ、オオクワガタよ。こんな物件、そう簡単にあるはずなかろうが。

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