「認知症とお金」症状が進んだ時の医療・ケア費は? 骨折や脳卒中などを合併したら負担はさらに増
一方、訪問介護は、都内のケアマネジャーによると、要介護1(日常生活に部分的に介助を必要とする)の場合、月15万円程度分の介護サービスの枠があり、1割の自己負担でデイサービスに週4回通い、福祉用具を借り、週1回の訪問介護を受けられるという。
要介護5(寝たきりで食事や排泄にも介助が必要な状態)の場合は、月40万円程度の枠で、訪問介護を1日2回、デイサービスに週2回、看護師や理学療法士による訪問看護を週2回、利用することが可能だという。
ここに示した枠は上限値で、利用者の状態やニーズによって提供サービスは異なるが、いずれも自己負担があることから、「家族の介護負担は増えても費用を切り詰めたい」と、利用を控える声も聞くそうだ。
認知症に備えていくら必要?
では、認知症に備えていくら用意しておけばよいのだろうか。研究者の五十嵐さんに聞いてみた。
「認知症になってから平均寿命まで生きたと仮定すると、ケアの費用はトータルで約2500万円と試算されます。このうち医療費と公的介護費が合せて1100万円、インフォーマルケアコストが1400万円です。公的保険が適用される1100万円について自己負担分を用意するという意味では、その1~3割の110万~330万円となります」
30代、40代であれば、あと何年以内に数百万円を貯めておかなければならない、ということではない。将来、社会の仕組みや医療費にかかわる制度、医療そのものが変わることは十分にありうる。
ただ、こうしたことを知っておくことで、認知症医療の恩恵を受け、自分なりの生活を送るためには費用がかかりそうだという腹積もりはできる。
若年性認知症の当事者、藤田和子さん(一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループ代表理事)は、認知症になったあとに看護師の仕事を辞め家族の経済状況も変わったため、金銭的な感覚を全面的に見直す機会があったという。
「貯蓄は必要ですが、“あるもので何とかする力”をつけることも大切です。やりくりをして暮らせば、ちょっとした買い物が『小さな幸せ』になるものです。あるもので、あきらめずに暮らす、ということですね」(藤田さん)
認知症にかかる人が増えている今、認知症とお金の問題は避けて通れない問題だ。お盆休みで実家に帰省している人、家族で集まっている人もいるだろう。まさにいまが認知症やお金について家族で話し合う、いいタイミングかもしれない。
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