「認知症とお金」症状が進んだ時の医療・ケア費は? 骨折や脳卒中などを合併したら負担はさらに増
もう1つ、認知症が進むほど深刻になってくるのが、認知症があることで心身にさまざまな問題が起こる、という点だろう。
20年にわたり高齢者の在宅医療に取り組む、たかせクリニック(東京・大田区)理事長の髙瀬義昌医師によると、認知症の高齢者では感染症、脳卒中、骨折などで入院するリスクが高まる。入院が長引いたり、体が動かない期間が延びたりすると、認知症が悪化する「負のスパイラル」に陥りかねないという。
注意したい感染症は、誤嚥(ごえん)性肺炎。口の中にいる細菌が、誤って唾液とともに肺のほうに入り込んで起こる肺炎だ。
また、脳卒中は長年の高血圧などで傷んだ血管が破れたり詰まったりして生じる。骨粗鬆症で骨がもろくなっている人に転倒や尻もちで生じる骨折も、高齢者では寝たきりや要介護につながりやすい。
こうした病気がひとたび生じると、思った以上に高額な医療費がのしかかる。全日本病院協会や一部の公的病院の公表値によると、誤嚥性肺炎の入院は1回約100万円。脳卒中は約200万円、骨折すると約200万円かかる(いずれも保険適用前の金額)。
こうした治療費が、もともとの認知症にかかる費用にプラスされるため、その負担はかなりのものだ。
髙瀬さんは、血圧の管理や骨粗鬆症の治療、栄養や水分摂取への配慮、そして使用する薬の適正化が必要だと説く。感染症とその後におこる問題の負のスパイラルを予防するために、各種のワクチンを勧めている。
「大人向けのワクチンも種類がそろってきました。インフルエンザ、新型コロナウイルス、肺炎球菌、帯状疱疹、RSウイルス、それぞれに対するワクチンです」(髙瀬さん)
インフルエンザワクチンを毎年数千円の自費で接種する人は多いだろう。帯状疱疹ワクチンの最新型は、一度の接種(間隔を空けて2回が1セット)で効果が10年以上続くとされるが、2回分で4万5000~5万円。2024年に登場したRSウイルスワクチンは、1回2万5000円程度とみられる。
このように、ワクチンは健康保険が使えず原則自費になるため、その値段は高めだ。ただ、ワクチンによっては自治体の助成が受けられるものもあるので、住んでいる地域の役所などに問い合わせるといいだろう。
在宅医療や訪問看護にかかるお金
ところで、認知症が進行すると病院に通院することが難しくなるため、自宅に医師や看護師に来てもらう在宅医療や訪問看護が必要になってくる。
在宅で訪問診療を受ける場合、いったいいくらぐらいかかるのだろうか。
髙瀬さんは、「1カ月に2回医師が訪問する一般的なケースで、窓口負担割合が1割の方の場合、負担は月7000円程度から、と患者さんには説明しています」と言う。
看護師などが訪問する訪問看護は、介護保険で利用すると、30分以上60分未満の場合、1割負担では800~900円となる(地域や事業所によって異なり、ほかに交通費などが加算される)。
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