こうした傾向は、かつて組合に所属する工場労働者の多くが民主党に投票していたアメリカ中西部の「ラストベルト」ほど顕著ではない。例えば、2000年から2015年の間に、自動車の雇用は30%減少している。
その主な原因はテクノロジーとオートメーションだったが、 有権者はスケープゴートを探した。アメリカでもヨーロッパでも、伝統的に中道左派に投票してきたブルーカラー労働者が機械に仕事を奪われたとしても、オートメーションのような非人間的な力のせいにしたくなかった。その代わりに、移民や「不公正な」慣行による輸入品の増加など、より個人的で悪意のある犯人を探した。
2016年、トランプのデマゴギーはそのような人々の票を大量に獲得した。大卒でない白人有権者の間では、トランプは64%対28%でヒラリー・クリントンを破り、このグループではロナルド・レーガンをも上回った。
両政党とも保守主義に走っている
1940年から2012年まで、民主党、共和党どちらの大統領候補者も、貿易や海外直接投資に関する保護主義者ではなかった。両政党とも、1930年代の大恐慌と第2次世界大戦の教訓として、開放的な貿易は世界をより安定かつ繁栄させ、アメリカはより安全になると信じていた。それゆえ、アメリカはグローバリゼーションを推進してきた。
ところが、2016年にはトランプとクリントンの両候補がTPP(環太平洋経済連携協定)を含む自由貿易協定に反対する選挙戦を展開。しかもTPP自体、アメリカ政府は他国に譲歩を求める一方で、自国はほとんど譲歩しなかった。
それ以来、事態は悪化の一途をたどっている。同盟国に対するトランプとバイデンの関税だけではない。インフラ、半導体、グリーンエネルギーなどに合わせて1兆ドルを費やすバイデンの3つのプログラムには、過去数十年間で見られなかったほど同盟国を差別する厳しい「バイ・アメリカン(アメリカの自国製品優先購入政策)」要件が含まれている。
日鉄が「国家安全保障上の脅威」というレッテルを貼られている背景には、このような事情がある。残念なことに、これは選挙期間中の例外ではなく、時代を如実に反映しているものなのだ。
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