トランプは自分の利益になると考えを変えることでよく知られる。そのため、日鉄は最近、トランプの第1期国務長官だったマイク・ポンペオを雇っている。
ただ、経済はトランプが感情的になる数少ない分野だ。トランプは「アメリカの鉄鋼は日本に買われている。ひどい話だ」と発言しているほか、USスチールの買収に断固反対するオハイオ州のJ・D・バンス上院議員を副大統領候補に選んだのもトランプの外資嫌いを物語っている。今後数カ月、トランプとバンスがどれだけ日鉄に対する暴言を繰り返すかが1つの指標になるだろう。
要するに、今回の買収は孤立した問題ではなく、アメリカ両党の有権者や政治家の間で保護主義やナショナリズムが高まっていることを示す、「炭鉱のカナリア」の1つだということだ。
カギを握る仲裁委員会
とはいえ、日鉄がUSWとの合意を取り付け、カマラ・ハリス副大統領が大統領選で勝利すれば、買収が実現する可能性はある。その場合、現在買収に反対しているホワイトハウスも民主党議員も考えを改める可能性が高い。
これまでのところ、USWは頑なに買収を拒否している。それどころか、アメリカでの森副社長との会談の後、組合はこれ以上の会談を拒否している。
ただし、8月15日から始まる第三者による仲裁委員会が突破口になる可能性もある。委員会が、日鉄が労組の不満に対する救済策を提供すれば取引は可能だと判断すれば、双方はそれに従わなければならないからだ。
今回の争点は2つある。第一に、USWはUSスチール買収の入札プロセスから除外されたと主張している。しかし、USWは入札権を同じアメリカの鉄鋼会社であるクリーブランド・クリフスに譲渡しており、日鉄は同社に競り勝っている。
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