中国半導体戦略、米国が見過ごした「脅威の火種」 業界のキーマンが語る「米中半導体摩擦」前夜

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しかし、PCASTが出した提言は、米国が中国をグローバル経済において欠くことができない貿易相手国と見ていたことがわかるものだった。

「中国には懸念材料が山ほどあるが、世界はグローバルであり、半導体は非常に複雑なサプライチェーンになっている。それには手をつけられないだろう。だから、米国は他国に追いつかれないように速く走ればいい」

世界中の情報が集まる米国の、しかも大統領の諮問機関でさえ、グローバリズムは未来永劫続くと考えていたのだ。

ファーウェイのバックドア疑惑

米国の対中制裁がようやく本格化したのは、2018年4月になってからだ。

きっかけは、中国通信機器大手のZTEが、米国の拠点からイランや北朝鮮に違法に通信機器を輸出し続けたことだった。米国政府はZTEに対し、米国企業との取引の7年間禁止を言い渡す。

2019年に米国政府は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)も輸出管理法に基づくエンティティー・リスト―― つまり禁輸リストに加え、米国由来の技術やソフトウエアを使用した製品の輸出を許可制にした。ファーウェイの製品に、不正アクセスの侵入口である「バックドア」が仕掛けられ、機密情報などが漏洩するリスクがあるという理由からだった。

この影響は、ファーウェイ製品の半導体を設計するファブレス子会社の中国ハイシリコンや、生産を請け負うSMICにもすぐさま飛び火した。

わずか数年前にはPCASTで「懸念なし」としていた米国が〝変心〞した理由は何だったのか。

1つは、ZTEの違法輸出やファーウェイのバックドア疑惑が、米国の経済安全保障政策をあからさまに刺激する行為だったことだ。さらには、2019年から始まった新型コロナウイルス感染拡大が半導体の製造・供給を直撃したことがダメ押しになったのだと思う。米国でも自動車メーカーが減産に追い込まれ、政府間ルートで台湾に増産を要請する事態になった。

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