中国半導体戦略、米国が見過ごした「脅威の火種」 業界のキーマンが語る「米中半導体摩擦」前夜
いま、半導体が「熱い」。
アメリカのバイデン大統領は中国への半導体規制の強化を検討、トランプ前大統領が台湾の防衛費支払い義務について言及すると半導体関連株が急落、マーケットも敏感な動きを見せるなど、世間の耳目が集まっている。
2023年まで経済同友会の副代表幹事をつとめ「半導体業界のキーマン」として知られる小柴満信氏は、2010年代の中ごろから中国の半導体産業国産化への姿勢に脅威を感じ、いち早く警鐘を鳴らしていたにも関わらず、アメリカの危機感は低かったと語る。
どのような経緯で対中制裁は強化されていったのか。小柴氏の著書『2040年 半導体の未来』より抜粋・編集してお届けする。
中国製造2025の脅威
「SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)に加盟する企業の皆さんは、中国進出に気をつけるべきだ」
SEMIとは、半導体の装置、材料、ソフトウエアをまたいだ世界的な業界団体だ。SEMIは毎年1月に米国でストラテジー・カンファレンスを開く。
忘れもしない、2018年1月のストラテジー・カンファレンスで、壇上に立った私はこうスピーチした。中国をサプライチェーンに深入りさせることに警鐘を鳴らしたつもりだった。
ところがこの発言は、強い批判を浴びた。
「ミスター・コシバ」
振り返ると、SEMIの幹部が渋い表情をして見つめている。
「あのスピーチはどうだろうな。世界はグローバルだ。サプライチェーンもグローバルで成り立っているのだから、中国批判はあまりしないでくれ」
何だって……。私はあまりの認識の差に驚いた。
私が中国を警戒する根拠はほかにもあった。中国が2017年6月1日に施行した「サイバーセキュリティ法」である。
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