冴えない「パナソニック」は何が欠けているのか 「笛吹けども踊らず」に陥ってしまっている背景

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2003年にパナソニックを退職した後、日本ヒューレット・パッカード、ダイエー、日本マイクロソフトなどで経営トップを務め2017年4月に復帰したパナソニック コネクトCEOの樋口泰行氏の活躍だ。

約8600億円を投じて完全子会社化したサプライチェーンのソフトウエア大手、アメリカのブルーヨンダーとの一体化を進めた。組織文化の改革にも熱心で、パナソニック コネクトは、2024年7月に日本次世代企業普及機構が実施する「ホワイト企業認定」で「ゴールドランク」を獲得した。

2022年4月に樋口氏が著し、同氏の写真が表紙になった『パナソニック覚醒』なる書籍が書店に並んだ。パナソニックと冠が付いている限り、同社の事情に詳しくない人が見れば、パナソニックのCEOは楠見氏ではなく樋口氏だと思ったのではないだろうか。

樋口氏のような「出戻りの効用」を期待し、パナソニックグループは2024年4月、アルムナイ(OB、OG=定年退職者以外の離職者)と緩いつながりを保ちながら、協業・共創を生み出すコミュニティとして、「パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ」の運用を開始した。

メンバーシップ型からジョブ型へ移行

【2024年7月25日16時18分追記】初出時誤りがあったため修正しました。

楠見氏は人事制度改革にも積極的で2022年4月に役職定年を廃止し、一部の事業会社では年功序列や終身雇用などからなる「メンバーシップ型雇用」から、職務記述書に明記し、一定の条件下で正社員としての契約を結ぶ「ジョブ型雇用」へ移行している。

他社と横並びに見えなくもないが、最も古典的ながら今も高く評価されているモチベーション理論である「期待理論」に基づいている。「人は自分が期待し、価値を認める代償が得られると思えば、モチベーションが生まれる」という考え方である。

旧・松下電器産業は、日本で最初に終身雇用制度を導入した企業だけに、心の壁を崩すのも簡単ではない。そのうえ、持ち株会社制度に変わってから、給与制度、評価制度、昇格制度がグループ内の各事業会社によって異なる。完全なジョブ型雇用に全面転換するのには時間がかかりそうだ。

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