冴えない「パナソニック」は何が欠けているのか 「笛吹けども踊らず」に陥ってしまっている背景

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楠見氏はもともとパフォーマンスを振りまく劇場型経営者ではない。感情をあらわにしない秀才型経営者だ。大学で働いていると、教授たちに同様のタイプが多い。深く考え込むと顔が引き締まると言えば聞こえがいいが、話し相手の目には、表情が乏しい人に映っているだけである。かくいう筆者も愛嬌のない人間であると自負している。採用基準を「運と愛嬌」がある人だと考えていた松下幸之助氏から見れば不合格である。

ダイキン「中興の祖」と楠見氏の違い

空調分野でパナソニックを追い抜き、世界首位の座にあるダイキンは、創業者、創業家出身者からサラリーマン経営者の井上礼之氏にバトンを渡したところ、30年間で売上高を12倍にした。創業家(松下家)の呪縛から解放されたサラリーマン経営者の楠見氏と何が違うのだろうか。

井上礼之氏は人事畑出身であったことから、今でいうところの人的資本経営を泥臭く展開。これを「野人経営」と称している。6月に会長を退任した井上氏はとにかく初対面から感じのいい人であった。

単純すぎる表現と言われるかもしれないが、この印象は非常に重要ではないか。井上氏は野太い声で威厳を保ちながらも、親しみやすい語り口と笑顔で、従業員だけでなく顧客、株主、社会に接し発信していた。

現在の大企業を見ていると賢い人だらけだ。特に社外取締役は自らも賢いと思っている自己肯定感が強い人が多い。トップも総じて秀才ばかりだ。だが、経営者は賢すぎる印象だけでは「支持率」は高くならないだろう。硬軟の頃合いが大切なのだ。

経営者たるものすべてのステークホルダーと適度な距離を取らなくてはならないが、一方、人間的な親しみやすさと「人たらし」とまで揶揄されるほどの表現力が求められる。筆者は多くの著名経営者と会う機会に恵まれたこともあり、こういう質問をよく受ける。

「どのような経営者が理想的だと思われますか」

筆者は冗談を交えてこう答える。

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