冴えない「パナソニック」は何が欠けているのか 「笛吹けども踊らず」に陥ってしまっている背景

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確かに、50代の管理職から楠見氏の不安を裏付けるような声を聞いた。

「私が入社して以来、とてもいい局面になった記憶がないので、それでも一応利益を出し続けられていることは、これはこれで強みなのかもしれない、とも思える時もあります」

経営トップに盲従している状態にないか

業績が思わしくないとき、とかく経営トップは組織文化に原因があると発言しがちである。だが、組織文化は一朝一夕では変わらない。スーツ姿の男性が大勢を占めていた会社で、トップが主導し服装をカジュアルにし、女性管理職、役員の数を恣意的に増やしたとしても、組織の深層では変わらぬ空気が漂っていることが往々にしてある。そのような澱んだ空気が組織行動を歪めかねない。

パナソニック傘下の事業会社では、今年に入ってから電子部品材料の認証不正やミラーレス一眼カメラのサイトで不適切な有料画像の使用が発覚するなどの不祥事が相次いでいるが、従業員が自ら考えることを忘れ、経営トップに盲従してしまう「精神の監獄」の影響はないのだろうか。≪このくびきのおかげで、従業員は組織が自分たちに害をなしていることに気づけないのである≫(M. J. ハッチ 著, 日野健太 ・宇田理 監訳『組織論のエッセンス』同文舘出版, 2024, P.23)。

定時株主総会では「なぜ一言も説明がないのか」と株主から怒りの声が上がった。楠見氏の回答は「不正発覚を受けて電子回路基盤材料の責任者2人はすでに更迭している」「外部のコンテンツ制作会社に任せきりになっていた」「調査後に詳細を発表する」と後手に回った。

創業者、およびそれに準じる「目立つCEO」が長く続いた企業では、カリスマ幻想が意識的、無意識的の両レベルで定着している。マックス・ウェーバーによれば、「カリスマ」と見なされる決定的な条件は、奇跡を起こす人物であると認められることである。

この条件を満たしていなければ、従業員は順調に出世街道を歩んできたCEOであっても物足りなさを感じてしまう。「演技力」に欠けた人であればCEOという肩書だけが独り歩きする。

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