「神様」による早すぎる台湾総統選の大予測(後編) 2026年地方選でネット人気の小政党に活路は?

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他方、仮に柯氏が市長選に出馬したことで野党が共倒れになり民進党が漁夫の利で当選することになったとしても柯氏にとっては悪い話ではない。国民党はどうしても野党連合を成立させなければならないという切迫感が高まり、交渉で柯氏の強いカードになる。同じ条件は桃園市についても当てはまるので、桃園市への出馬可能性も見ておいた方がよいだろう。

振り返れば、2006年と2010年の台北市長選挙で民進党の謝長廷氏、蘇貞昌氏がそれぞれ出馬した。これは当選できなくても善戦すれば総統選挙の出馬につながるという計算があったからだ。同じことを柯氏が考えても不思議はない。もちろん柯氏が進んで出たいわけではないだろう。リスクもある。

しかし、柯氏が出馬せずに民衆党の党勢を保つというのはかなり難しいのではないだろうか。2028年選挙の出馬の勢いもつかないし、野党連合の交渉で国民党に足元を見られていずれにしても不利になる。柯氏には何か秘策があるのかもしれないが、筆者は他に思いつかない。

頼政権は野党と中国の圧力をかわせるか

頼政権が登場してまだ2カ月だが、台湾政局は与野党対立が極まっている。野党は立法院で徹底的に政府与党を追い込んでいく計算だ。

立法院での闘争のほかに、9月には基隆市長の罷免投票が行われる。さらに、立法委員の在任が1年を過ぎると罷免案の提出ができる。来年2月以降は民進党と国民党の罷免合戦になるだろう。予算審議も始まる。

頼総統の政権運営がマヒするという事態には至っていないが、与野党の対立が一段と激化する中で中国の圧力もかわしていかなければならない。金門島周辺海域では中国によって台湾の管轄権がサラミスライスのように切り取られている。

現職の頼氏は再選をかけて1対1の最も厳しい状況を想定して戦いの準備を進めるだろう。野党は候補一本化によって必勝を期す道がある。米中の変数も大きくなる。台湾政局は目が離せない。

小笠原 欣幸 台湾政治研究者、東京外国語大学名誉教授

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おがさわら よしゆき / Yoshiyuki Ogasawara

1981年一橋大学社会学部卒業。1986年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了(社会学博士)。東京外国語大学外国語学部専任講師、同大大学院総合国際学研究院教授などを経て、2023年退官。同大名誉教授。英国・シェフィールド大学、台湾・国立政治大学で客員研究員を務めた。主著に『台湾総統選挙』(晃洋書房、2019年)

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