日の丸半導体メーカーという看板を下ろすまでの、ルネサスの10年にわたる”暗闘”。キーマンとなった柴田CEOの手腕とは。
国が約1兆円を投じ、次世代半導体の国産化を目指すラピダス――。2025年の生産開始へと突き進むラピダスとは対照的に、“脱・日の丸”を果たした半導体メーカーがある。
2010年に発足したルネサスエレクトロニクス。日立製作所・三菱電機のロジック半導体部門の統合で誕生したルネサステクノロジに、NECエレクトロニクスが合流して誕生した。長らく大株主だった3社は、今年に入りすべての株式を売却した。
さらに2013年に1383億円を出資し、最大69%の株を保有していた官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)も、2023年末には全株を売却。同年にルネサスは初めて配当を開始した。
政府出資から10年を経て、”普通の会社”になったルネサス。その道のりでは、「日の丸半導体」に絡まったしがらみを断ち切るための暗闘が繰り広げられた。
火中の栗を拾う
実行のキーマンは、2019年からCEO(最高経営責任者)を務める柴田英利氏。2013年にINCJが経営再建のためにCFO(最高財務責任者)として送り込んだ人物だ。現在51歳の柴田氏は、どんな改革を進めてきたのだろうか。
「柴田は今まで会ったビジネスパーソンの中で、ずば抜けて賢かった」
FA・制御機器メーカー大手のオムロンで社長・会長を務めた作田久男氏は、柴田氏のことをそう評価する。2013年にルネサスの再生を請け負うCEOとして招聘された作田氏は、CFOだった柴田氏の元上司である。
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