「経済効果47兆円」とも喧伝された5G。しかしキャリアの5Gへの設備投資は想定を下回った。その余波は国内外で、多くの企業に広がっている。
「キャリアが設備投資に慎重な数年間だった。業界として、5G整備は思ったより進まなかった」
キャリア向け通信設備のシェアリング事業を手がけるJTOWERは5月、2022年から台湾のフォックスコンと進めてきた、5G専用周波数である「ミリ波」に対応する共用無線機の開発中止を発表した。同社の田中敦史社長は、5Gをめぐる現状を冒頭のように話す。
ミリ波は現状使える最速の5G向け周波数で、スピードが速い分、建物などの障害物を回り込みにくい性質があり、広く利用するには大量の基地局や多額のコストが必要とされる。5G開始後、キャリアは4G用の周波数を5Gに転用して対応エリアを広げる戦略を重視する傾向があり、結果としてミリ波は局所的な整備にとどまった。
田中社長は開発中止の理由について、「ミリ波はもっと普及していくと考えたが、そうはならなかった。iPhoneを含めて端末自体が対応しておらず、キャリアからすると、整備しても使えないと意味がない。マーケットの状況や開発の進捗などから総合的に判断した」と説明する。
5Gへの期待と疑念が株価に反映
モバイル通信向けの電波は、通信規格が進化するほど、高い周波数帯を利用する歴史を歩んできた。電波は周波数が高くなると、ミリ波のように通信速度が上がる反面、広範囲に届きにくくなる。
このため超高速大容量の5G周波数の普及に当たっては、4Gよりも多くの基地局や設備投資が必要になると見込まれた。その過程で、キャリア各社は投資の効率化を図るため、従来自前で整備・保有してきた通信インフラのシェアが進むとの見方が強まった。
そこで投資家の注目を集めたのが、2012年の設立以降、早くからインフラシェアに取り組んできたJTOWERだった。5G商用化直前の2019年12月に上場を果たし、上場時に2620円だった同社の株価は2021年には1万3000円を超えた。
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