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総務省の前キーマン官僚が見据える「5G後」の未来 6Gは来ない?5Gの誤算で世界が気づいた現実

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通信業界は2030年代に向けてどんな変化をするのか。直近まで2年にわたり次世代通信政策を牽引してきた、総務省の前・技術政策課長に聞いた。

世界的にスローダウンする5Gへの投資。総務省の前・技術政策課長の川野真稔氏は、4Gまでは「モバイル業界にとってバラ色の時代」だったと振り返る(右写真:梅谷秀司撮影、左写真:編集部撮影)

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開始から4年経った5Gが足元で苦戦する一方、次世代に向けた国の通信戦略がすでに本格的に動き始めている。
総務省の情報通信審議会は6月、2030年代を見据え、「ビヨンド5G(6G)に向けた情報通信技術戦略の在り方」に関する最終答申をまとめた。答申は次世代の「ビヨンド5G」について、無線の進化を軸とする「5G」までとは一線を画す形で、有線や空・宇宙なども含めた幅広い概念として位置づけている。総務省は今後、答申を踏まえつつ、「オール光ネットワーク」や「NTN(非地上系ネットワーク)」といった次世代の新技術分野を支援する方針だ(詳細はこちら)。
2024年7月まで2年間にわたり、総務省の技術政策課長として次世代通信戦略を牽引してきたのが、川野真稔氏(現・デジタル庁参事官)だ。川野氏は、先の菅義偉政権下で携帯電話料金値下げ政策の実務を担った"豪腕官僚”(総務省関係者)としても知られる。
審議会の答申や5Gの課題を踏まえ、次世代通信をどのように考えているのか。川野氏に話を聞いた。(取材は6月21日に実施)

次世代通信はこれまでと違う変化をする

――総務省では次世代通信を「ビヨンド5G」と呼んでいます。「6G」とは何が違うのでしょうか。

「ビヨンド5G」や「6G」とは何か、と言われると、世界の共通理解は存在していない。「10年ぐらい先にできるだろうネットワーク」の姿をどう呼ぶか、ということだ。

「6G」と言う国も多いが、5Gの次の「確定しているもの」という語感を与える。ただ、次はこれまでの10年間のジェネレーションと全然違う(進化をする)のではないかと思う。

5Gまでは、無線の部分、スマホから地上のビルの上にある基地局間の無線通信を高度化することで、できるだけつながりやすく、多くの情報が流れるようにする議論をしてきた。無線よりも先の部分はあまり考慮せず、地上のネットワークしか想定していなかった。

次世代は明らかに衛星などの非地上系ネットワークが入ってくる。「これまでとは違う変化をする」という語感を持ちながら、僕は「ビヨンド5G」という言葉を使っている。

実際、日本の総務省や情報通信審議会は、無線だけでなく、有線の部分、陸海空含めたすべてを「ビヨンド5G」ととらえようと議論している。諸外国では、従来の延長で、「5Gの次は6Gが来る、じゃあどうしよう」という議論をしている国が多い印象だ。日本の取り組みを差別化する意味でも、「ビヨンド5G」は定義上、気に入っている。

――5Gまでのように無線中心ではなく、それ以外の通信も含めて幅広く見る、ということですね。なぜ次世代は、無線の世界の延長でとらえることが難しいのでしょうか。

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