商用サービスがスタートして4年。5Gに対する期待は目下、”幻滅”へと様変わりしている。目算はどこで狂ったのか。
山あいの長閑な道を走るワンボックスカー。車に運転手の姿はなく、後部に座る若者がスマートグラスを装着してサッカーの試合に夢中になっている。
田園地帯の上空を飛ぶドローンが果樹園に水を散布し、高齢者が自宅で鏡のような画面と向き合い遠隔医療を受診している。田舎町に着いた若者は祖父母にスマートグラスを渡し、ホログラフで現れた仲間たちと演奏を披露して記念日を祝う――。
2018年10月、総務省が公開したこんな1本の動画が話題を集めた。第5世代移動通信システム「5G」が普及した将来像を描いた4分弱のイメージムービーだ。公開後、YouTube上での再生回数は75万回を超えている。
1980年代以降、10年周期で進化を続ける通信規格。5Gは、ひと世代前に当たる4Gの20倍速の「超高速大容量」に加え、通信のタイムラグをなくす「超低遅延」、さまざまなセンサー類や端末が同時につながる「多数同時接続」という特徴がうたわれた。
冒頭のようなユースケースを想定し、「高速道路や新幹線に匹敵する21世紀の基幹インフラ」(石田真敏・元総務相)「経済効果47兆円」(総務省)といった大きな期待の下、2020年3月から商用サービスが始まった。
5Gは「幻滅期」に入っている
あれから4年――。冒頭のムービーが描いた未来像はいまだほど遠く、ある携帯キャリアの首脳は「5Gは全然うまくいっていない状態だ」と嘆く。
2024年3月、5G向け電波の割り当て時に決められた範囲での携帯キャリアによる5G整備はいったん区切りを迎えた。だが、5G普及に向けたインフラ整備をめぐる総務省のワーキンググループが7月19日に公表した報告書は、現状をこう指摘した。
「5Gは、いわゆるパイプ・サイクルでいう『幻滅期』に入り、『5Gならでは』の実感がわかないといった声や、『なんちゃって5G』といった言葉が行き交う状況になってしまっている」
“期待外れ”が続く5Gの実態。目算は、いったいどこで狂ったのか。
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