一方、東芝は委員会設置会社で社外取締役も複数居る、表面上はコーポレート・ガバナンスの優等生会社だった。しかし、重大な会計操作に対して取締役会も、監査委員も、会計監査事務所も有効に機能しなかった。
「コーポレート・ガバナンスの進化で日本企業は良くなる、そして株価も上がる」といったおめでたい幻想は卒業しよう。東芝だけで納得しない人は、同じく「なんちゃって委員会設置会社」で業績不振に陥ったソニーも見よう。委員会や社外取締役が容積悪化や不適切会計の原因になったわけではないが、これらを防ぐ上で役に立たなかったことは確認しておきたい。ガバナンスは格好だけを作ってもダメなのだ。
東芝への適切なペナルティとは?
だからと言って東芝が許されるわけでは全くないが、米国の会社を見ても分かる通り、しょせん会社というものは内部者がグルになって「時に悪さをすることがある」ものであり、残念だがそれが現実だ。
では、東芝に対する適切なペナルティがどのようなものかと問われると、これがなかなか難しい。ネットの書き込みを見ると、東芝を断固上場廃止にすべきだという意見と、上場廃止は主として株主・投資家への処罰であり不適切だという意見の両論がある。
今回の問題の場合、株主に経営者を有効に監視する手立てはなく、従って彼らに経営者監督の責任を問うことが適切であるようには思えない。他の企業でもそうだろう。
筆者は、東芝の上場廃止には反対だが、一方、それで今後上場会社の経営者に対して同様の不正への誘惑を断つ十分なだけの負のインセンティブになるかと言われると、少々自信がない。
社長・取締役などの役職辞任は、本人達にとってはそれなりの痛手だろうが、将来この程度の可能性があることで不正会計が十分防げるようには思えない(だから東芝では続いていたわけだし)。また、今後の推移を見ないとまだ分からないが、東芝の歴代トップの刑事責任を問うところまで持ち込むのはなかなか大変だろう。
結局、投資家は、上場企業の株式を買うにあたって、「このレースは時には八百長があるかも知れない」という予見を前提にせざるを得ない状況が続きそうだ。対策は、警戒心と分散投資しかない。
加えて、東芝株には、ガバナンスを強調する投資家やインデックス(JPX日経400など)がこれをポートフォリオから外すか否か(外さないなら、彼らの「ガバナンス重視」は空念仏に過ぎない)、当面の悪材料が東芝の株価にどう反映するかなど、投資にとっては見所が満載である。
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