「百里の道を行かんとするものは、九十九里をもってその半ばとすべし」。
柄にもなくこんな言葉が脳裏に浮かびましたな。ハワイ・マウイ島でのTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)閣僚会議(7月28日~8月1日)が、実質合意抜きに終了した時のことである。
TPP実質合意ならず、オバマ大統領は激怒した?
交渉から戻った甘利明TPP担当相は、すぐに官邸を訪れて報告している。このところ逆風続きの安倍首相としては、「これが合意していれば、わが内閣の成果だと喧伝できたのに…」と内心悔やみつつも、甘利さんを頭ごなしに叱責したりはしなかっただろう。
それに引き換え、おそらくオバマ大統領はフロマン通商代表に雷を落としたのではないだろうか。オバマさんは滅多に声を荒げない紳士であるけれども、仮に筆者が大統領であれば、きっとこんな風にどやしつけている。
「お前が大丈夫だと言ったから、閣僚会議をハワイでやらせたんだぞ!」
「地元でこんな醜態をさらしてしまって、俺の面目は丸つぶれだ」
「国際会議を主催すると、カネもかかるんだぞ」
「このままでは合意ができたとしても、俺の任期中にTPP法案の議会批准が間に合わなくなるじゃないかあっ!」
思えば6月24日に米国議会でTPA(貿易促進権限)法案が通ったら、途端に交渉妥結への楽観ムードが流れ始めた。「日米が合意すれば、後は皆ついてきてくれる」とタカをくくったのであろう。日本もまったく同様だが、それまでの駆け引きでヘトヘトになって、日米以外の10カ国の事情をよく考えていなかったのではないか。
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