ところが他の交渉参加国にも意地があり、国内事情があった。カナダは秋に総選挙を抱えていて、マレーシアも政情が不安定。そしてFTA先進国たるニュージーランドには、「このままでは理想と程遠いものができてしまう」という焦りがあった。
そうでなくとも小国の側は、知的財産権や投資ルールなどでTPPによる不利益がどうしても多くなる。その分、市場アクセスなどのメリットがなければ、何をやっているのか分からなくなる。せめて乳製品の輸出拡大くらいないと、「最初にTPPを始めた国」であるニュージーランドとしては格好がつかないのである。
かくして最終局面になって、通商交渉の大ベテラン、ティム・グローサー貿易相が動いた。この世界の鉄則は、”Nothing is agreed until everything is agreed.”(すべてが合意しない限り、何も合意できない)。かくして乳製品の拡大がなければ、医薬品データの保護期間延長も認めないぞ!という反撃が飛び出したのである。
かくしてTPP交渉は仕切り直しとなった。日米の政権が、ともに政治的得点の機会を逃したことになる。終わってみれば、「負けに不思議の負けなし」といったところか。
「内閣支持率40%割れ=1年以内に退陣」の嫌なデータ
問題はこれから先だ。安倍内閣にとっては、国会運営や外交日程で綱渡りの日々が続くことになる。新安保法制の不人気や新国立競技場建設をめぐる不手際などにより、安倍内閣の支持率は6月から7月にかけて大きく下落した。以下のデータはほとんど衝撃的だ。
○最近の内閣支持率データ
共同通信37.7%(7/17-18)←47.4%(6/20-21) ▲9.7p
時事通信40.1%(7/10-13)←45.8%(6/5-8) ▲5.7p
朝日新聞39%(7/11-12)←39%(6/20-21) ―
読売新聞43%(7/24-26)←49%(7/3-5) ▲6p
毎日新聞35%(7/17-18)←42%(7/4-5) ▲7p
日経新聞38%(7/24-26)←47%(6/26-28) ▲9p
NHK 41.0%(7/10-13)←48.0%(6/5-7) ▲7p
産経FNN39.3%(7/18-19)←46.1%(6/27-28) ▲6.8p
安倍内閣はこれまで2年半にわたって、一貫して4割以上の高い支持率を維持してきた。だからこそ政治の安定がもたらされてきたわけだが、ここへきて支持率と不支持率がクロス(逆転)している。「内閣支持率が4割を切ると、1年以内に退陣に追い込まれる」というのが過去の永田町パターンだ。
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