当面、株価が大きく下げた場合には「公的プット・オプション」(公的年金、日銀等の株式買い)が付いていることもあり、ギリシャ、中国に関しては、これらを材料に株価が下げたら「買いチャンス」だと考えて置いていいと筆者は考えている(結果に保証はしないが)。海外の材料で真に怖いのは、たぶん米国の金融引き締めだけだ。
安保と東芝は根が深い
一方、安全保障関連法制を巡る国会審議は衆議院の強行採決でヤマを越えたように見える。安全保障政策そのものについて本稿では論じないが、安倍内閣がこの問題で大きく支持率を落としたことは重大だ。
調査によって異なるが、現状では30%台後半の支持と、これを上回る不支持といった形勢で、未だ直ちに政局の流動化を招くレベルではないが、安保法案では随分大きな政治的資源を使ったといえる。あと1つ失敗があると、支持率30%割れの「危険水域」に入っておかしくない。
問題は、失敗につながりそうな案件が今後少なくないことだ。対応によっては「得点」に変えられる可能性もあるが新国立競技場の問題は国民の関心が高い(政権のためには「お友達」の下村文科相を早く切る方がいいが、安倍首相はこの種の人事が苦手だ)。その他にも、戦後70周年談話、沖縄の辺野古基地問題、原発の本格再稼働と、政権の対応によって、支持率の急落につながりかねない問題がこれから複数ある。
もともとの相場の土台がアベノミクスによる金融緩和政策であるだけに安倍政権の弱体化は、2018年に任期を迎える黒田日銀総裁が再任されないのではないかという憶測を呼ぶことなども含めて、アベノミクス相場の終焉につながりかねない材料として注意しておきたい。
もう一つ、投資家にとって重大な注目材料は、東芝の不適切会計問題だ。こちらは、直ちに相場全体の上下に影響する要因ではないが、個別株に投資している投資家にとっては深刻な問題だ。
本件を調査した第三者委員会は新旧3人の社長の関与を認定したが、これは、投資家にとってショックと言うよりはむしろ安心材料だろう。1回百億円単位の利益水増しをトップが知らずにいて会社が運営されていたとすれば、その方が余程心配だ。まして、東芝は原子力にも関わる会社である。
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