強烈な「私情」が、仕事力を極限まで高める イノベーションを起こすには「公私混同」せよ

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柔軟性がないことの代名詞として用いられることが多い「お役所仕事」、つまり「自分の仕事はここまで」と明確に線引きしてそれ以外はやらないという姿勢は、本来は集団で大きな仕事を実行するためには、最も有効なやり方だったのです。

アリの口癖は「そうは言っても」です。組織で起こっている大抵のことは「妥協の産物」です。「清濁併せのむこと」のできる「成熟した大人」であることは、企業の中で生き残るためには必須の要件といえます。

ところが既存の仕組みをリセットするような革新的なイノベーターに必要なのは、おかしいことにはおかしいと正論を吐く「ピュアな」姿勢です。このような姿勢は周囲の人々からは「わがままな子どもじみた行動」に見えます。

多数かつ多様な構成員がいる大きな組織で合意形成をするために重要なのは客観性であり、それを裏付ける論理やデータです。「たまたまそうひらめいたから」とか「◯◯さんがそう言っていたから」とか「自分はぜひやりたいと思うから」といった個人的な直観や感情だけで、多数の人を説得することは困難です。

線を引くアリ、線を引かないキリギリス

前述の分業化が典型的な例ですが、仕事は大きな規模になってくると、明確に「線を引いて」分担することが重要になってきます。アリは役割分担もはっきりしており、タテの階層関係や指揮命令系統もきっちり線が引かれた状態であることを好みます。あいまいであることは悪だとみなします。

「公私の線引き」についても、同様のことが言えます。組織で仕事をするということは、ある意味で「役割を演じること」です。役割を演じ終わったら「素の自分」に戻って「劇中で演じている人物」から離れるというのが、アリの基本的な考え方です。だから「仕事に私情を挟む」「公私混同」などもってのほかなのです。

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