想定外の「専業主夫」生活を大満喫する51歳の人生 大手食品メーカーのエリート会社員からの大転換

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桃子さんが神社仏閣好きなので、1週間後に2人で千葉県にある大きなお寺にお参りに行った。その場で桃子さんから「あのときは本気だったの? 本気じゃないならそう言ってもらえればかまわないよ」と問われた。ここは酒の力を借りずにハッキリするべきタイミングだ。

「本気です。僕と結婚してくれませんか」

博貴さんは改めてプロポーズし、桃子さんからの快諾を得た。それが2020年12月。翌月には桃子さんは任地に戻らなければならず、それぞれの実家に急いで挨拶を済ませた。現在の博貴さんは桃子さんの帯同者として暮らしている。

「駐在手当でお手伝いさんを雇えるので洗濯と掃除はやってもらっています。平日の料理は私がクックパッドで覚えた和食を出していますが、土日の料理は妻の担当です。妻がもらっている扶養手当で食材費ぐらいは賄えますし、余ったら私のお小遣いとさせてもらっています。私にも蓄えはあるので、妻へのプレゼントぐらいは買えますよ」

妻と結婚しなければ、会社を起こすこともなかった

高学歴でかつてはエリート会社員だった博貴さん。社会的にはまだ珍しい「専業主夫」であることに不安はないのだろうか。

「最初は焦りがありました。自分も早く仕事を見つけなくちゃ、と。でも、2年経った今ではこの生活が普通になりました。妻と一緒にお笑いのユーチューブ動画を見たり、バカな会話をしたり。こんなに楽しいならばもっと早く結婚しておけばよかったなと思うことはありますね。でも、この年齢で結婚して子どもがいないからこそ、今のような生活があるのだと納得もしています」

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最近、博貴さんは「コンサルティングとトレーディング」の会社を立ち上げた。日本の次ぐらいに好きになったこの国に根を下ろして働きたいと思っている。

「成長著しいこの国と関わりたい日本企業の要請に何でも応えられる会社にするつもりです。妻は別の国で援助活動をしてもいいと思っているようですが、私はこの国が気に入っています」

博貴さんには適職だと筆者は思う。国際プロジェクトの進行管理のキャリアがあり、愛情も純情も豊かで、さまざまな人とまめに連絡を取り合ってフラットな交際ができる人物だからだ。この国で培った公私の人脈も大いに生きることだろう。

桃子さんと結婚しなければ、博貴さんは専業主夫を経験することも会社を起こすこともなかった。結婚相手の都合に合わせた生活環境であっても、楽しく暮らす努力をしていると、自分が持つ意外な力を発揮できるような仕事や趣味と出会えるのかもしれない。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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