想定外の「専業主夫」生活を大満喫する51歳の人生 大手食品メーカーのエリート会社員からの大転換

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「結婚した1年後にそのプロジェクトが終わって、今は主夫です。婦人部の他、卒業した大学の現地コミュニティの活動などにも勤しんでおります」

髪は白髪交じりだけど、人懐っこい笑顔とユーモラスな話し方で年齢を感じさせない博貴さん。Zoom画面越しにも人柄の良さが伝わってくる。確かに、いろんなところで世話役を任されそうだ。

大学卒業後の16年間、恋愛や結婚とは縁遠かった

博貴さんは大学を卒業してからの16年間は大手食品メーカーで働いていた。海外事業などにも携わる幹部候補生だったようだが、恋愛や結婚とは縁遠かった。なぜなのか。「隣の部屋に妻がいるので……」と言いにくそうな博貴さんに無理に問い質したところ、自分は失恋を引きずるタイプなのだと小さな声で教えてくれた。

「同じ支店に配属された同期の女性が好きでした。ちゃんと告白しましたよ。当時のコンプライアンス研修で『告白は3回まで。4回目からはセクハラになる』という指針を示されてようやく諦めました(笑)。30人弱の同期はいい人ばかりで、今では結婚して幸せな家庭を築いている彼女ともずっと友だちです。でも、諦めてから10年は他の女性を好きになりませんでした。どのへんが好きだったのか、ですか? 最初はやっぱり見た目ですかね……。あ、今は違いますよ。私が一番かわいいいと思っているのは妻です!」

最後だけやたらに声が大きくなる博貴さん。純真な人物である。40歳のときに国際協力系のNGOに転じ、日本と海外を行き来する日々が始まった。失恋の傷はさすがに癒えていたが、大企業から離れた身でキャリアを構築しなければならない。必死で働き、2016年には日本政府による国際援助の拠点に移ることができた。そこで知り合ったのが専門家の桃子さんだった。

「20人以上いる拠点でしたが、全員がオフィスにいるわけではありません。妻は現場に出向くことが多い専門家です。食事会などでたまに顔を合わせる程度でした」

それでも桃子さんの「かわいい感じ」の見た目と一生懸命な働き方に好感を持っていたと振り返る博貴さん。桃子さんとの仲が深まったのは新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけだった。

「プロジェクトの途中で帰国せざるをえなくなりました。どちらも東京に家があるので、『ゴハンでも食べに行きましょう』と誘い合って会うようになったのです。居酒屋で隣り合った酔っ払いに、『夫婦じゃないの? あなた、好きならハッキリしろ。告白しろ』と絡まれて、その場でプロポーズ。妻は返事をくれませんでしたが、その晩は一緒に泊まりました」

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