藤野 それにしても、2%の管理手数料を支払うだけの意味はあるのでしょうか。
中野 そこも問題のひとつ。結局のところ、数百万円程度でラップ口座を利用する人って、低リスクの運用を求める傾向が強いから、出来上がるポートフォリオはバランス型のそれになる可能性が高いわけですよね。バランス型のポートフォリオを買うのに、信託報酬と合わせて年間3.5%もコストを負担する意味がどの程度あるのかということを、しっかり考えた方が良いと思うのですよ。まあ、それもコスト意識が希薄だから、そのまま受け入れてしまうのでしょうけれども。
手前味噌ですが、弊社が運用している「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」って、国内外の株式、債券市場に分散投資しているグローバルバランス型のポートフォリオ運用をしているのですが、その信託報酬率は年0.7%程度で、購入手数料はかからないノーロード型の商品です。
しかも、常時リバランスを厳格に行っているわけで、それを長期保有するのと、ラップ口座でバランス型ポートフォリオを持つのとでは、期待リターンはそう大きく違わないはずです。それでトータルのコストは2%以上の差が生じますから、その分、ラップ口座の方が、最終的に利用者が得るリターンは不利になるでしょう。
ラップ口座の良し悪しは、手数料に帰着する
渋澤 そういえば、この間、新聞の1面にゆうちょ銀行が野村アセットマネジメントと三井住友信託銀行と組んで、資産運用会社設立を検討しているなんて記事が出ていたけれども、これなに?
中野 やはり、そのネタに突っ込んできましたね。まあ、窓口に来るお客様からすれば、郵便局もゆうちょ銀行も同じというイメージじゃないですか。でも、実際には別法人で、セゾン投信に資本参加したのはあくまでも日本郵便であって、われわれからすると、ゆうちょ銀行とはいっさい無関係なのです。
藤野 それにしても、良いラップ口座ってあるのでしょうか。
中野 すべてはコスト次第だと思います。ラップ口座を扱っている金融機関が提案するポートフォリオの期待リターンに対して、コストが割高なラップ口座は、決して良いとは言えないでしょう。
藤野 昔ながらのプライベートバンクって、言うなればラップ口座のような運用をやっていたわけですよね。まさにグローバルなポートフォリオを組んで長期運用を行っていたわけですが、プライベートバンクがかれこれ200年も続いていることを考えると、ラップ口座的な運用が悪いとは決してないと思います。
中野 でも、スイスの伝統的なプライベートバンクって、預けてある資産の総額が数十億円、数百億円の世界ですから、管理手数料率ははるかに低いはずです。日本のラップ口座の問題点は、すべてコストの料率に帰着するのですよ。
渋澤 コストも含めて問題点の多いラップ口座ですが、日本って風呂敷に見られるように「包む文化」の国じゃないですか。ラップも「包む」という意味ですから、ひょっとしたら日本人には意外と受け入れられる気もするな~。ただ、品物を綺麗に包んでいる上質な包装紙も、自分が支払う代金に含まれていることに気付いているお客様は、ほとんどいない。
藤野 それでも、高島屋でお買い物をしたいという人は多いんですけどね。
中野 でも、投資信託に立派な包装紙を求める個人って、大勢いるんでしょうか。
渋澤・藤野 ・・・・・・・。
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