渋澤 期待リターンの高い投資対象で運用するなら、まだ理解できますが、現状、資産を安定的に殖やしたい、つまりリターンが低くても良い、と考えている個人が、ラップ口座で運用することとは、算盤勘定が合わなさそうですね。
日本人は、投資商品に対してコスト意識が低い
藤野 これ、本当に不思議なのですが、日本人って総じて投資商品に対して支払うコストの意識が希薄だと思うのですよ。仮にラップ口座で300万円を運用するとしましょうか。これで年2%の管理手数料だとしたら、金額ベースで年6万円が差し引かれていくわけですよ。
もはやラップ口座は富裕層の運用手段ではないから、普通に節約などをしながら日常生活を送っている人も多いわけですよね。年間6万円を節約するって、結構大変なことですよ。その人がラップ口座で年間6万円ものコストを負担しているのだとしたら、何というか、この矛盾感はすごい。
中野 金融機関で投資信託などを購入している個人の方って、コスト意識が物すごく希薄ですよ。今でもセミナーなどで「ラップ口座っていい商品なんですよね」というような質問があります。もちろん、「経済合理的にはやらない方がいい」って言いますけどね。
でも、私は日本において、なかなかラップ口座って根付かないと思います。証券会社は金融庁からコンサル営業を求められたものだから、ラップ口座でもやっておけば、それに対するエクスキューズになるだろうという程度の認識しか持っていないのではないでしょうか。とはいえ、金融庁は「中身を問う」と言っていますから、いずれこれまた手数料稼ぎのためのラップ口座という事実が白日の下にさらけ出され、最終的には廃れていくのではないでしょうか。
渋澤 本来なら根付くべきサービスだと、私としては思うのですが、専門家がポートフォリオを構築するのは良いとしても、安定型の資産クラスばかりでポートフォリオを組むと、コスト負けになって問題が生じる。となると、やはり成長から基づく期待リターンの高い株式や信用リスクの分析が必要な高金利商品でポートフォリオを組む性質の強いサービスにならざるを得ないのでしょうね。
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