製紙大手2社の姿勢試すエクアドルでの労働問題 取引先企業で浮上の「強制労働疑惑」にどう対処

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「子会社で取引関係がある」と回答したのは三菱製紙だ。人権問題については、「3~4年前に強制労働の疑いが欧州で取り上げられたが、そのような実態はないとマヴェンズから説明を受けた」とする。

また、「現地を訪問した第三者企業から児童労働や強制労働の実態はないと説明があった」と補足した。ただ、第三者企業とは何かという再質問には回答しなかった。

日本製紙は「守秘義務の観点から回答を控える」とだけコメントし、取引関係の有無すら明かさなかった。しかしマヴェンズは日本製紙との取引を認めている。日本製紙は情報開示の乏しさが際立つ。

2社も国連の指導原則を支持して人権方針を策定しているが、この問題にどこまで向き合ったのか。小保方氏は、「古川拓殖側の意見のみを聞いたということであれば対応は不十分。被害を訴える側の話を聞くのが重要だ」と指摘する。

伊藤忠商事との古き縁

先述したように小保方氏らがまとめた声明文は、FPCが60年以上にわたって強制労働などの深刻な人権侵害を行っていると指摘していた。そうなるとクローズアップされる日本企業がもう1社出てくる。総合商社の伊藤忠商事だ。

1963年にFPCを設立したのは古川義三氏。伊藤忠の創業者、伊藤忠兵衛の妻の甥だ。1910年代に古川氏が立ち上げたのが古川拓殖で、フィリピンでアバカの栽培を行っていた。敗戦によってフィリピンの農園が没収された後、古川氏はエクアドルに新天地を求めた。

伊藤忠の広報部によると、「古川拓殖へ資本参加を過去行っていたが現在、資本関係はない」「FPCへの資本参加も行っていたが1978年に売却しており、資本関係はない」。

ただ、FPCの元幹部で古株的存在だったM氏は、短い期間とはいえ伊藤忠エクアドル社で幹部を務めていた。先述したように刑事手続きが進んでいる中、その対象者の1人になっている。伊藤忠の広報部は「古川拓殖、(すでに退職している)M氏ともに現在は当社と関係がないためコメントを差し控える」とする。

FPCを巡る問題では、日本企業の「ビジネスと人権」に対する姿勢が試されているといえる。人権方針の制定など関連施策を推進してきた企業は多い一方、横並びの対応で実態が伴っていないのではないかとの批判があった。頬かむりを決め込んだと見られないような対応が望まれる。

大塚 隆史 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事