製紙大手2社の姿勢試すエクアドルでの労働問題 取引先企業で浮上の「強制労働疑惑」にどう対処
マヴェンズのオフィスを訪れると、待っていたのは日本人経営者だけではなかった。FPCのマネジャーや弁護士など4人のエクアドル人も同席した。
訴訟に対するマヴェンズとFPCのスタンスはこうだ。「裁判はまだ最終審での判決が下されておらず確定していない」「農園を巡っては複数の裁判が行われており、多くの裁判で勝訴している」。
憲法違反をめぐる訴訟で原告の主張が認められたことについては、「政治のプレッシャーがあったからだ」とエクアドル人弁護士が主張した。また、同様の憲法違反を問うた別の裁判では「第一審、控訴審ともにFPCが勝訴している」という。
「なぜ裁判になっているのか」「労働者側の言い分をどう受け止めるのか」を尋ねると、エクアドル人たちは一斉に首を横に振り始めた。弁護士が「彼らは労働者ではない。インベーダー(侵略者)だ」と断じ、説明を始めた。話を総合すると次のようになる。
「インベーダーが占拠」と反論
FPCは直営農園800ヘクタールのほかに、土地をリースしている農園1200ヘクタールを持っていた。後者では、FPCから借り受けた土地で借地人がアバカを栽培し、加工した繊維をFPCなどの事業者に販売していた。
FPCが2018年に農園をすべて直営に改めようとしたところ、武装勢力に農園を占拠されたそうだ。直営に改めようとしたのは「労働者の生活環境を向上させるためだった」(マヴェンズ経営者)とする。
労働環境については、プロモーション映像を流してまで安全に十分配慮していると力説したが、土地のリース先の労働者がどういう状況だったのかは知らないという。人権機関の報告書に掲載された写真は、「インベーダーに占拠された後のキャンプのものだ」(同)と主張する。
「われわれは事実無根の問題に対して、正義のために戦っている」(同)と強調したマヴェンズとFPC。原告の労働者側の主張との隔たりは大きい。
FPCと取引を行う日本企業はこの状況をどう見るのか。国連の人権理事会で2011年に承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」では、取引先で起きた人権問題についても是正に向けて関与するよう求めている。多くの日本企業がこの「指導原則」を支持して人権方針を策定している。
取材を進める中でFPCと取引関係のある日本企業は、三菱製紙や日本製紙であるとわかった。FPCや関連企業との取引関係や対応状況を確認するため、東洋経済は2社に質問状を送付した。
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