対話の現場/言葉の意味を共有して対話的協働を実現する

対話の現場/言葉の意味を共有して対話的協働を実現する

北川達夫 日本教育大学院大学客員教授

どうしました? 初老の整骨師が尋ねた。

「急に背中のこのあたりが痛くなりまして……」

私は痛みで脂汗を流しつつ、背中をなでさすりながら言った。

整骨師はいちべつして言った。

「ああ、そこは『背中』ではなくて、普通は『腰』といいますね」

神奈川県の小学校に、先生たちとの研究協議のために訪れていたときのことだ。急な「背中痛」に襲われた。立っていることも座っていることもできないほどの、激しい痛みだった。おかげで、生まれて初めて小学校の保健室のベッドに横たわることができたのだが、このままでは動きが取れない。そこで、小学校の近所の整骨院に行き、冒頭のやり取りとなったわけだ。

ここは背中か? それとも腰か? 部位によっては境界があいまいである。整骨院での治療の後、小学校の先生たちに聞いてみたら、8割が「背中」、2割が「腰」とのこと。整骨師は「普通は腰」と言っていたが、この小学校においては「普通は背中」だったのである(多数決で決めるようなことではないが)。

こういった事例に遭遇するたびに、特定の言葉の指し示す内容が、人によって少しずつ異なることを実感する。背中か? 腰か? その境界があいまいなあたりについて、いま読者の皆さんが思い浮かべている部位も、人によって異なるはずだ。

専門的には厳密な定義があるのかもしれない。だが、専門外の人間にとっては、自分が背中だと思っているところが背中であり、腰だと思っているところが腰である。

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