「業績好調」のマツダがタイ市場で抱える懸念 "日系の金城湯池"から生産撤退するメーカーも

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マツダはタイでSUV「CX-30」など4車種を生産する。2019年11月にAATで量産が始まった CX-30は、「タイランド・カー・オブ・ザ・イヤー2020」を受賞した(写真:マツダ)

「タイに減速感が出ている。拡販が進むインドでカバーしないといけない」。ある大手部品メーカー幹部はそうため息をついた。

自動車産業が集積し、“アジアのデトロイト”と呼ばれるタイ。日本車がシェアの約8割を握る“金城湯池”としても知られるが、そこで異変が起きている。

調査会社マークラインズによると、タイ市場における2023年度(2023年4月~2024年3月)の累計販売台数は、トヨタ自動車が前年同期比8.9%減の26.7万台、いすゞ自動車が同36.9%減の13.6万台、日産自動車が同29.7%減の1.6万台と、日系メーカーの多くが台数を落とした。足元の4月も同様の傾向が続く。

背景には、タイ市場そのものの冷え込みがある。2023年度の自動車販売台数は前年度比13.5%減の約72万台だった。金利上昇によって自動車ローンの審査が厳格化し、新車が購入しづらくなったことが原因の1つと指摘されている。

中国メーカーが攻勢を強めていることも影響している。その代表格である中国EV大手・BYDの2023年度の販売台数は約3.5万台で、前年度の5949台から大きく躍進した。そうした結果、2022年(暦年)に86.0%あった日本車のシェアは、2023年には77.8%にまで低下している。

スズキはタイの4輪車工場を閉鎖

こうした市場環境下、6月7日にはスズキが、タイ南東部の4輪車工場を2025年末までに閉鎖することを発表した。2011年に工場を設立した際、小型車が伸びてくると読んでいたが、「期待していたほど伸びてこなかった」(広報担当者)という。

SUBARUはタンチョン・グループ傘下企業との合弁会社で行っていたタイでのノックダウン生産を廃止することを決定した。当該工場ではこれまで、SUBARUからのライセンスに基づく生産が行われていた。今後も現地での販売は継続し、2025年以降は日本からの輸出に切り替える。

日系メーカーにとってタイは、タイ国内向けの生産拠点にとどまらず、ASEANを中心とした輸出拠点でもある。とはいえ、おひざ元での販売台数があまりに振るわなければ、工場の低稼働といった問題が浮上する。

こうした動きがある中、ひそかに関心を集めるのがマツダだ。タイでの販売台数が少ないうえ、直近の減少率も大きいからだ。マツダの2023年度のタイ販売台数は1万4555台で、前年度比で約40%減少している。

2023年11月の中間決算発表の席で、毛籠勝弘社長はタイについて「(ASEANの中で)今一番厳しい状況になっている」と認めたうえで、「我慢の時期が続く」との見通しを語っていたが、不幸にもその通りになった。

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