
「この先の1~2年、タイでは一生懸命耐えていくことになる」。マツダの毛籠勝弘社長は厳しい表情で現状を語った。
「アジアのデトロイト」と呼ばれ、自動車産業の一大集積地であるタイ。“日系の金城湯池”として知られ、少し前までは日本勢が市場シェアの8割超を握っていたが、その様相は変わりつつある。
調査会社マークラインズのデータによれば、2024年のタイ市場における販売台数は、トップシェアのトヨタ自動車が前年比15.2%減となる24.68万台、2位のいすゞ自動車が同45.7%減の8.97万台と、主要な日系メーカーが軒並み販売台数を落とした。
背景には、金利高による自動車ローン審査の厳格化で新車販売自体が冷え込んだことがある。加えて、タイ政府のEV(電気自動車)優遇策を受けて安価な中国製EVが大量に流入したことがある。その結果、2022年に85.4%だった日本車のシェアは、2024年には76.7%まで低下した。
マツダも例にもれず劣勢を強いられている。2024年の販売台数は9220台で、前年比44.3%減に沈んだ。
一部ではタイ撤退の噂も
マツダとフォードの合弁工場である「オートアライアンス(AAT)」は低稼動に陥っている。2018年には13万7930台の生産実績があったが、それが2024年には5万9564台まで減少した。
AATはASEANを中心とした輸出も含めた生産拠点ではあり、1カ国での販売減が生産減に直結するわけではない。とはいえ、おひざ元タイでの退潮が悪い影響を与えないはずはない。タイほどではないにしても、ASEAN全体で見ても販売減が顕著になっている。
そうした状況から「マツダはタイから撤退する」という臆測が一部で飛び交った。2024年夏頃にSUBARUがタイでのノックダウン生産廃止を発表、スズキが2025年末までに現地4輪車工場を閉鎖することを公表したことも、この臆測に拍車をかけた。
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