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マツダの命運を握るアメリカ【値引き依存の泥沼から劇的改善】トランプ関税で問われる「ブランド価値経営」の実力

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マツダにとって最重要市場を襲う”トランプ関税”。円安修正も進む中、近年取り組んできた北米でのブランド改革の成果が問われる。

高級感がある黒を基調にした販売店で、ブランド価値の向上を図っている。写真は販売改革の手応えを感じ始めた2020年の様子(編集部撮影)

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「改革に着手したとき、北米のマツダディーラーは“一揆”が起きかねない雰囲気になった。脅されることもあった。それはもう大変な状態だった」。マツダの毛籠勝弘社長はそう振り返る。

近年、北米がマツダにとってドル箱市場になっている。2024年3月期には販売台数が26.4%増となる51.4万台を記録し、高価格帯のSUV(スポーツ多目的車)の台数増加によって収益性も向上している。

"言うのもおぞましい”値引きが横行

もっとも、10年ほど前までのマツダはブランド力に乏しく、現在のように高価格帯の車種を販売できるような状態ではなかった。その背景にあったのは、毛籠社長が「言うのもおぞましい」と表現する現地ディーラーの値引き販売だ。「北米の消費者がマツダ車を買う理由は、『価格が安いから』『値引きが多いから』。ブランドとしてお客様から信頼を得ていなかった」(同)。

責任はメーカーであるマツダ側にもあった。

自動車販売店が乱立する北米市場で、短期的な「台数」を求めて卸売りを増やした結果、積みあがった在庫を売りさばくためにディーラーへインセンティブ(販売奨励金)をばら撒いた。ディーラーはインセンティブ目当てで安売りするため、中古車相場が下がりブランド価値も下がる。それがまたインセンティブ頼みを強める悪循環。かつて日本でも「マツダ地獄」なる言葉があったが、似たような状況が北米では長く続いていたのだ。

2016年に転機が訪れる。当時常務だった毛籠社長が日本人として約20年ぶりに北米統括会社トップに就任、販売改革に乗り出したのだ。キーワードとなったのが「ブランド価値経営」だ。

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