サハリン島「ギネス級に親切」おじさんと北の果て 稚内からフェリーで5時間半、さらに1000キロ
おじさんっ、ありがとう! かたく握手をした。おじさんの親切はギネス級です。絶対に道案内の世界記録です。このご恩は一生忘れません。でも、ここってキャンプ場じゃなくてホテルじゃんって言ったら、ちょっと怒っていた。
その夜は、ホテルの近くの雑居ビルの駐車場で寝た。翌日の午後、最北端の町オハにたどり着いた。
発電所の煙がそのまま雲となって重くのしかかった、悪霊が取り憑いたような陰気な町だ。この日も適当な駐車場をみつけられず、町外れの廃工場で車中泊した。
あんた、本当はクマじゃないの?ってくらい巨大な犬が、狂ったように吠えていた。
ついに到着したサハリン島の北の果て
翌朝は早起きして、いよいよ最北端へ。お誂え向きの濃い霧のなか、町を抜け出た。道路標識がなくなり車も消えた。鳥も飛んでいない。動くものがないから音もしない。
謎めいて見えなくもない背の低い森をふたつみっつ分けいった。道がくねくねと曲がり、ぐっと狭くなったと思った矢先、前に進めなくなったのである。
ついに行き止まった。 とうとう来てしまった。
サハリン島の道の北の端っこは──、北の果ては──、その謎は──。
と、もったいつけるほどのことはなくて、鉄製のゲートと砂利の山とトラック。採石場だったのである。
驚くほど普通の景色に驚いて声が出ないが、ある意味想定内だから心配は無用である。呪われたりしなかったのは張り合いがないけれど、安全第一でなにより。証拠写真を一枚撮ったあとはすることがなくなってしまった。うろうろしていると叱られそうだから、3分と滞在することなく、来た道を戻ったのである。1000キロも。
お疲れさまでした、Yuko。