サハリン島「ギネス級に親切」おじさんと北の果て 稚内からフェリーで5時間半、さらに1000キロ
謎なき謎を解き明かして、その地を「マイ秘境」と呼ぶのもまたボクらの旅のスタイルである。マイ秘境とは、ボクらしか知らない景勝地、いわくありげな土地のことである。自分でハンドルを握る旅ともなると、道中の99%は名も知れぬ土地を走り、名もないどこかで飯を食べることになる。が、そこを無名と片付けず、ほどよい理屈をくっつけることによって、なかなか良いところではないか、飯が美味いではないかと感動し、わが家の秘境とするのである。
諸条件を満たせば楽園に昇格するのだから、マイ秘境探しはミッションでもある。などと、くどくどと屁理屈を並べるまでもなく、サハリン島は全体が秘境だった。
食堂で出会った世界一親切なおじさん
町を外れると人の気配がなくなり、ほぼ無人島。景色的にはさほどの特徴はないけれど、無人島と思えば見るもの触るものすべてが味わい深い。廃墟を覆う雑草は地球が滅亡したかのように猛々しく美しい。
加えて、世界一親切な人物に出会ったのである。
夕方、「注文の多い料理店」みたいな隠れ家的食堂を見つけた。店にいたおじさんに、
「この辺に駐車場はないですかね? 車中泊をしたいんだけど」と訊いてみた。
「駐車場? ないねー。ホテルじゃダメかい?」「ホテルは高いから」「じゃ、キャンプ場は?」「え、キャンプ場があるの?」「あるよ」ついて来なと言うので、おじさんの車について行った。それがむちゃくちゃ遠かった。砂利道になっても突っ走った。日が暮れても止まらない。もしかして誘拐されてる?とYukoが心配するから、こっそり止まってみた。闇夜に消えたおじさんの車はほどなく戻ってきて、しっかり付いて来いよと怒られた。1回の休憩もなく走るに走った。着いたぞっておじさんが言ったのは、2時間半後! その距離140キロ。たかが道案内で2時間半の140キロ。すごくね?
東京の新宿で道を尋ねたら、静岡県の富士宮市に案内された親切具合だ。ついぞ日本でそんな親切な人に会ったことがない。恐ろしく迷惑な道案内だった。