たとえば本書の中でも挙げられている「本の帯の推薦文」や「ECサイトの星評価」。日本でも、著者の同業者や有名人の推薦文が記された帯をよく見かけます。同じ人が大量の本に推薦文を寄せているケースも珍しくありませんが、忙しい中で大量の本を読む時間を、その推薦者はどうやって捻出しているのか。本書の著者はこの点に疑問を投げかけ、「推薦文を書いている人の推薦文の信頼性は、その人が書いている推薦文の数に反比例する」と指摘しています。これには深く頷かされました。
また、ECサイトで買い物をする際、私たちはレビューや星評価を参考にしますが、気をつけて見ないと、無自覚のうちにカモにされる可能性があります。本書の著者はこの点についても、「(5つ星評価で)ポジティブな評価が大量に寄せられている場合、その評価は当てにならない」「むしろ2つ星や4つ星の評価を読んだほうが参考になる」と指摘しています。私もAmazonで本を買うときは、一応、星の数を参考にしますが、まず1つ星だらけの本は買いません。かといって5つ星だらけの本も買わないのです。あまりにも高評価に偏っているのは、ほぼステマと見て間違いないからです。
「受け手側」の姿勢が問われている
このように消費者をカモにすべくさまざまな策を講じている企業のマーケティングを、一概に責めることはできません。ただ「同じ人が大量の本に同時に推薦文を寄せている」「ポジティブな評価に偏りすぎている」といった事態の不自然さに気づけるというのは、賢い消費者の1つのあり方でしょう。
こういう視点を持つことで「企業が力を入れて売りたがっているもの」ではなく、本当に自分が求めている商品にたどり着ける確率が高くなるわけです。
つまり、情報化社会がますます高度になるほどに問われるのは、私たちの情報の受け取り方なのです。たとえば飲食店選び1つをとっても、「食べログ」はどれくらい信頼できるのか。むしろ最近はグーグルマップのレビューのほうが信頼度は高いかもしれない。あるいは地元の人たちしか知らないような名店を探したいのなら、地元の有志がつくっているフェイスブック・グループなどに参加するのが一番間違いない、ということもありえます。
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