70年代生まれ団塊Jr.世代が今なお割を食う事情 一発逆転狙う「地獄のスパイラル」の行く末

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たとえば情報商材本を買って読むと、そこには「あなたもこの情報商材を売って儲けましょう」とある。こうして、自分たちがカモにした人間を、今度は誰かをカモにする人間に変えるビジネスモデルがみるみる広まりました。

この構図の中では、カモは一方的な被害者ではありません。「勝ち組」の席を巡って競争している、地獄のような「カモり・カモられ」スパイラルができあがってしまいました。しかし、それも今では変わりつつあるようです。地獄のスパイラルも行くところまで行き着くと世代間の自浄作用が働くのか、今は「自分だけが生き残ればいい」のではなく、仲間を大切にし、助け合いやシェアを重んじる機運が高まっているのです。

平成の世の30年間、ずっと続いてきた「カモり・カモられ」の社会構造から、日本はようやく脱しようとしていると私は認識しています。

「複雑な世界観」を磨く

本書『全員“カモ”』には「深遠さを装ったデタラメ」という言葉が出てきます。何か深いことを言っているようで、実は中身が空っぽな言葉を信じやすい。重要な判断においても直感的で、分析的な思考に長けていない。そういう人はカモにされやすい。

そこでも思ったことですが、カモにされやすい人は、総じて「単純な世界観」で生きています。前編で述べたような、テレビのワイドショーに出ている「自称・専門家」の言葉を鵜呑みにする、陰謀論にハマる、他人の(しかも大半は運による)成功譚が自分にも当てはまると信じる、書籍の帯の推薦文やECサイトのレビューを妄信する……すべて物事を極端に単純化するクセがあるばっかりに陥る落とし穴と言っていいでしょう。

世の中は複雑です。一見、単純な問題でも、いざ解決しようと思うと「あちらを立てればこちらが立たぬ」というケースはザラです。そんな面倒臭くてややこしい世界を、面倒くさくてややこしいままとらえ、理解しようと努めること。安易な正解に逃げ込まず、「正解が出ていない」というグレーな状態に耐えながら思考し続けること。ものの見方の「射程」を伸び縮みさせながら世の中のさまざまな事象を眺めてみること。

このように「複雑な世界観」を磨くことが、ますます複雑化、多様化する社会で、「隙あらば人をカモにしたい勢力」にからめとられずに生き抜く一番の防衛策ではないでしょうか。

(構成:福島結実子)

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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