999,998人は無視しても、2人が引っかかれば成立するビジネスモデル。本書にも類似ケースが紹介されていますが、この取材をした当時も不謹慎ながら「なるほどな」と納得してしまいました。
古今東西、「人をだます人」も「人にだまされやすい人」も存在してきました。この先も、おそらく両者とも消えてなくなることはないでしょう。それどころかテクノロジーがどんどん進化している現代は、詐欺師にとってはだまし放題の「いい時代」になっているといえます。
インターネット以前は、いわゆる「名簿屋」から仕入れた「過去にだまされたことのある人」の個人情報を頼りに、直に電話をかけたり、ダイレクトメールを送付したり、自宅を訪ねたりするというのが常套手段でした。「一度だまされた人は二度だまされる」というのが詐欺師の間の常識なので、「過去にだまされたことのある人」に当たるのがもっとも効率的だったわけです。
しかし、現代の詐欺師の主戦場はインターネットです。名簿なんかで当たりをつけずとも、理論上は、全世界に散らばっているカモたちめがけて大きな網を投げることが可能になっている。先に紹介したスパムメールのビジネスモデルも、インターネットがなくては成立しません。ほんの2人を落とすために100万人に仕掛けるなど、電話・ダイレクトメール・訪問しかカモと接触する方法がなかった時代にはとうていできないことでした。
インターネットに加えて、昨今、目覚ましく進化している生成AIも、詐欺師にとって格好の詐欺ツールとなっていくでしょう。音声や画像をAIで自在に作成するなど、近い将来、オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺がさらに巧妙化するのは間違いありません。
消費者をカモにしている企業
ところで、隙あらば人をカモにしようと目論んでいるのは詐欺師だけではありません。企業のマーケティングも、いってしまえば「いかに消費者をカモにするか」という発想であると見ることもできるでしょう。
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