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アメリカの大統領ドナルド・トランプは5月17日、ウォルマートが値上げを「関税のせいにするのをやめるべきだ」と不満をぶつけた。これを聞いた経済の専門家の多くは、大統領が以前、値上げで企業を厳しく非難したときのことを思い出した。
だが、それは昨年の出来事で、発言の主は当時の大統領ジョー・バイデンだった。バイデンは、国民がガソリン、食品、家賃の値上げに遭っている理由として「企業の強欲さ」を持ち出し、自身の政策がインフレを悪化させたという批判をかわした。
そして経済の専門家たちは全体として、トランプの言い分には、バイデンの言い分と同じくらい納得していない。
専門家の間で見解が分かれる
「基本的にどちらの事例にも見られるのは、大統領が政策ミスを犯し、その政策ミスが消費者物価の上昇につながり、政策ミスを犯した大統領が企業に責任をなすりつけているということだ」。右寄りのシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のエコノミスト、マイケル・ストレインはそう話す。
現時点で中国からの輸入品に8月半ばまで30%を課すことになっているトランプ関税についていえば、その影響は経済全体に広がり、消費者物価の上昇につながるだろう。企業がコスト上昇分を部分的にかぶれば、利益が減ることになる。インフレが加速し、経済成長は鈍化、失業率の上昇を引き起こす可能性もある。
主流派のエコノミストたちは、企業のコストが跳ね上がったときに値上げするのは何ら不当なことではないという見解でおおむね一致している。だが、そのような見方が経済の専門家以外にも広がっているとは、とうてい言いがたい。