言葉を大事にするのに「歴史家」の手順は役立つ 『歴史学はこう考える』松沢裕作氏に聞く

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『歴史学はこう考える』著者の松沢裕作氏
松沢裕作(まつざわ・ゆうさく)/歴史家。慶応大学経済学部教授。1976年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退、博士(文学)。専門は日本近代史、史学史。著書に『日本近代村落の起源』『日本近代社会史』『生きづらい明治社会』など(撮影:梅谷秀司)
歴史家は、過去の人々が記した言葉から情報を読み取り、つなぎ合わせて何かを示す。その作業手順をつまびらかにしたのが本書だ。近現代史を専門とする松沢裕作氏は、自らの論文と政治・経済・社会各分野の論文を1つずつ解剖した。

役立つ歴史家の作業手順

歴史学はこう考える (ちくま新書 1815)
『歴史学はこう考える (ちくま新書 1815)』(松沢裕作 著/ちくま新書/1034円/288ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──歴史に限らず、言葉を扱う人すべてに宛てた本だそうですね。

歴史家は過去を一生懸命調べて明らかにしているが、言いっ放しにするのではなく、ほかの人と言葉を共有しながら話を先に進めるという手続きを踏んでいる。その作業手順をさらして見せてみるのは、歴史に関心のない人にも意味があることではないかと思った。

──言葉を共有する、とは?

例えば、歴史家は過去の事柄について、「〜が起きた」といつも過去形で書くわけではない。「ここに『〜が起きた』と書かれた文書がある」と現在形で書くことで読者と共有している。

語尾が過去形か現在形かを気にしている時点でちょっと変な本だが、本書は「歴史家なら当然知っていることを皆さんにお伝えする本」ではない。自分も含めて、歴史家が無自覚的にやっていることを反省した本だ。

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