ギリシャ、「緊縮策拒否」でどこへ行くのか 国民投票「反対」多数でユーロ離脱も
ギリシャ国民は緊縮策の受け入れを拒否
ギリシャの命運をかけた7月5日の国民投票は、債権者側の要求する財政再建策への反対票が62%と、賛成票の38%を大きく上回った模様(開票85%強段階でのBloomberg報道)だ。
ギリシャの野党勢力やEU(欧州連合)の政府関係者は、投票が事実上ギリシャのユーロ残留の是非を問うものであるとし、ユーロ圏への残留を希望するギリシャ国民の不安感に訴え、反対派の勢いを削ぐことを目指していた。だが、チプラス政権側は投票がギリシャのユーロ残留の是非を問うものではなく、債権者との支援協議を有利に進めるための圧力、交渉材料になるとして、国民に反対票を投じることを呼び掛けていた。
投票用紙の文面は「欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)が6月25日のユーロ圏財務相会合に提出した2つの合意案(現在の支援プログラムの終了に向けた改革案、債務の持続可能性の暫定分析書)を受け入れるか」を「はい」と「いいえ」の二者択一の形式で尋ねるもので、ギリシャ国民の多くが希望するユーロ圏への残留の是非を問うものではなかった。
汎欧州の人権や民主主義などの基準策定を主導する欧州評議会は、今回の国民投票が事前の周知期間が1週間と短く、欧州の基準を満たしていないとの警告を発していた。国民が受け入れの判断を問われた債権者側の提示した財政再建策や債務の持続可能性分析は極めて技術的な内容なうえ、政府が発表したギリシャ語訳の一部に誤訳が見つかるなど、国民が投票内容を十分に理解していたかは疑わしいとの指摘もある。
投票用紙では受け入れ反対を意味する「いいえ(ギリシャ語でOXI)」のチェック欄が、受け入れ賛成を意味する「はい(NAI)」よりも先に記載されており、投票行動を誘導する狙いがあったのではとの憶測もある。
6月29日に銀行の営業休止と資本規制が開始されて以降、ATMでの預金の引き出し額は1人1日あたり60ユーロに制限され、年金支給額も名字のアルファベット順に曜日を変えてひとまず120ユーロのみが支給され、海外送金やクレジットカードでの決済が困難となり、代金未納による一部の輸入品の品不足や、小売店舗で生活必需品の買いだめが頻発するなど、国民生活には深刻な影響が及んでいる。
「債権者側の提案を受け入れなければ、ギリシャはユーロ圏から追い出される」、「このまま追加支援を受け取れなければ、国民生活は一層厳しくなる」と言った不安の声も聞かれた。だが、長年の緊縮策による生活困窮や経済疲弊に対する国民の不満のほうが上回った。
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