ギリシャ、「緊縮策拒否」でどこへ行くのか 国民投票「反対」多数でユーロ離脱も

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ECBがELAを打ち切る場合、資本規制下でも銀行破綻は避けられないとみられ、金融システムを維持するためには銀行救済が必要となる。銀行救済の必要に迫られた時こそが、ギリシャがEUによる銀行救済に駆け込むか、政府の借用証書(IoU)を発行し、自力で銀行救済費用を捻出しようとするかの分かれ道となる可能性がある。

借用証書や独自通貨の発行に踏み切るのか

EUの金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)には銀行への直接資本注入や銀行救済を目的とした政府への財政支援の仕組みがあるが、何れもギリシャ政府からの求めに応じ、支援提供国との間で改革条件(コンディショナリティ)で合意する必要がある。追加の財政支援協議が滞るなかで、銀行救済だけが切り離されて実行されることはないだろう。

ギリシャが銀行救済での資金援助を要請するならば、財政再建を含めた債権者側の要求を受け入れることが求められる。他方、借用証書や独自通貨を発行して銀行救済費用を捻出するならば、ユーロ離脱への第一歩を踏み出すことにもつながる。

投票結果を受けて、ギリシャ問題の解決の糸口はますます見通せなくなった。ギリシャはこのまま膨大な借金の踏み倒しとユーロ離脱へと突き進むかもしれない。ギリシャ危機が再燃した当初、波及リスクが限定的な今回は最終的にギリシャ政府が折れざるを得ないとの見方が大勢を占めた。だが、チプラス首相の瀬戸際戦術は交渉当事者や市場関係者の想定の先をいっている。ユーロ離脱という前例のない出来事が現実味を帯びるなか、ギリシャ問題を通じて欧州は団結の意思を問われている。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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