ギリシャ、「緊縮策拒否」でどこへ行くのか 国民投票「反対」多数でユーロ離脱も
チプラス政権は投票結果を盾に支援協議の場に再び臨み、債権者側に緊縮見直しでの譲歩を改めて求めることが予想される。だが、債権者側はチプラス政権の交渉姿勢に苛立ちを強めており、支援協議はまたも暗礁に乗り上げる可能性が高い。
欧州の政府関係者からは投票前に「受け入れ拒否はギリシャのユーロ離脱を意味する」との趣旨の発言も聞かれた。ただ、こうした発言の多くはギリシャ国民の不安に訴えかけることで投票結果を賛成多数に導くことを意図したものと考えられる。反対多数の投票結果が直ちにギリシャのユーロ離脱を意味する訳ではない。
ユーロ離脱をめぐる長い攻防戦が続く
そもそも、EU条約にはユーロ離脱規定が存在せず、どういった手順で離脱が決まるのかは不透明だ。単一通貨ユーロの導入基準を満たしたEU諸国はユーロの採用を義務付けられている(例外は適用除外が認められた英国とデンマーク)。そのため、ギリシャがユーロ圏から離脱するためにはEUから離脱する必要があるとの見解がある一方で、ユーロ圏から離脱したうえでEUにとどまることが可能との見解もあり、法解釈は必ずしも定まっていない。
仮にEUからの脱退規定を援用するにしても、離脱は協議に基づいて行われることとされており、一方的な離脱や離脱の強制は原則として認められていない。また、ギリシャ国民がユーロ残留を希望する限り、債権者側が離脱を強要することは本来できない。
支援協議が物別れに終わったとしても、今度はギリシャのユーロ圏やEUからの離脱の是非を巡る長く激しい攻防が繰り広げられることが予想される。債権者側はルール違反のギリシャがユーロやEUに居座ることはできないと主張するであろうし、ギリシャ側は合意に基づかないユーロ圏やEUからの追放は連帯を重んじる欧州の精神に反すると糾弾するだろう。
その間、追加の金融支援を受け取る望みがなくなったギリシャは、IMFへの融資返済やECBが保有する国債の元利払いを履行することが出来なくなる。国家財産の接収などができない財政破綻国家の唯一最大のペナルティーは新規の借り入れができないことにある。通常、新たな借金ができなくなった財政破綻国は、公共サービスを切り詰める必要がある。ただ、プライマリーバランスが昨年黒字化したギリシャでは、税収などの歳入によって利払いを除く歳出を賄うことができる。したがって、対外債務を踏み倒し続ける限り、公共サービスを切り詰める必要はない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら