少女の壮絶人生演じる「河合優実」に見た芯の強さ 不適切にもで話題、新作の「あんのこと」への想い
――まるで、杏とモデルになった女性を守るように、河合さんが、杏になっていったように感じます。
稲垣吾郎さんが演じるジャーナリスト・桐野も実在する方で、撮影前に杏のモデルになった方のお話を長時間かけて聞きました。いろいろな情報を得て、全力で彼女に近づこうとインプットしたんです。
でも、彼女の人生を再現するのではなく、河合優実という人間にしないと映画は成立しないと思い直しました。そこから、彼女について得たものをベースにして取捨選択し、想像で要素を加えたりもして、肉付けをしていった感じです。
――杏と河合さんの人生を重ね合わせて、感情を共有できる部分はありましたか?
あまりにも育った環境が違うので、私には想像するしかない。彼女はいろいろな痛みを受けてきました。それをいまの自分が経験することはできません。でも、共有できる感情もあります。
小学4年生で不登校になった杏は、社会経験が乏しいから、新しいものに出会ったときの感動が子どものように大きい。うれしいことがあったり、何か新しいことができるようになるたびに心がキラキラする感じは、私自身も同じです。そういう部分をふだんから素直に感じようと思っていました。
映画が現実の社会問題にどう役立つのか
――現代の社会問題を鋭く映し出す社会性の高い作品です。この映画が世に出ることで、社会にどう役立つことができると考えますか?
撮影に入る前に、そういう社会問題や課題に対して、映画を作ることにどういう意味があるのかなって、すごく悩んでしまって……。私は社会問題を伝えるジャーナリストでもないし、支援するボランティアをしているわけでもない。
直接、誰かを助けることを何もしないで、その問題を映画にするという、まわりくどいことをわざわざしている。何でこんなことをしているんだっけ、と考え込む瞬間って、今回の映画だけではなくて、すごくあるんです。
その答えはまだ見つかっていません。
杏のような境遇の人は、映画にアクセスできる環境にない。でも、その周りにいる人や、まったく関わりがない人たちが、自分たちのすぐ隣や、身の回りでこんな状況がいま現実にあるのだと想像してもらうことはできるかもしれない。
それが映画を作るひとつの意義だと思います。
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