「団塊的・昭和的・高度成長期的」思考からの転換期 「人生の分散型」社会に向かうビジョンと方向性

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こうしたプロジェクトを進めている関係で、各地の神社の関係者の方々と交流する機会も多いのだが、首都圏のある地域の神社の、比較的若い神職の方と話をしていた際、その方が次のようなことを言っていたのが印象に残った。

それは、その神社の来訪者の中で、団塊世代前後の人々の態度がもっとも横柄だったり、失礼だったりすることが多く、逆にむしろ若い世代の来訪者のほうが、神社あるいは伝統文化、自然信仰のようなことに対して一定のリスペクトや関心をもっていると感じられる、という趣旨の話だった。

これは私にとっても納得感のある内容であり、機会をあらためて主題的に論じる予定の「アニミズム文化」――これは今や日本の最強の文化的コンテンツとなっている「アニメ」ともつながる――や、本稿の土台となる関心の「日本像の再構築」というテーマとも関わる論点である。団塊世代の時代においていったん切断が生じた日本の伝統文化――私はその中心にあるのが上記の「アニミズム文化」と呼ぶべき自然観・世界観と考えている――を再発見し、それらを現代的なテーマと結びつけて新たな形で発展させていくことが、地域再生などの社会的課題への対応や日本の自己イメージの再構築などにおいて重要な意味をもつことになるのだ(こうした話題については以下の記事も参照されたい)。

強い「集団」志向の背景にあるもの

一方、3)の「強い「集団」志向と「ウチーソト」の区別」についてはどうか。実際のところ、団塊世代に特に顕著な行動パターンとして私がもっとも強い違和感を抱いてきたのがこの点である。

ここで「ウチーソト」の区別とは、「集団の内部では極端に気を使ったり“忖度”を行ったりするが、集団のソトの者に対してはきわめて無関心か、潜在的な敵対性が支配する」ような関係性をさしている。もちろん、人間の社会においてそうした区分が一定存在するのは当然のことだが、そうした「ウチ(身内)」と「ソト(他人)」の区別の強さあるいは“落差”が非常に大きいのが特徴的なのだ。

こうした点を論じた著作として、人類学者の中根千枝氏が1967年に公刊して大ベストセラーとなった『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書)があるが、同書にはたとえば以下のような記述がある。

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